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1 わたしときらりちゃん

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「今日のお勧めは豆腐チャンプルーだよ」

  わたしはそう言ってにっこりと微笑みを浮かべた。

「はい?  お姉さんにお勧めなんて聞いていないよ」

「うん、聞かれていないけどお勧めしちゃった。えへへ」

「お姉さんって変な人だね。あ、今日はもう一人のもっと変なお兄さんは来ていないんだね」

  きらりちゃんはそう言いながら豆腐チャンプルーと書かれたボタンを押した。

「あ、きらりちゃん!  豆腐チャンプルーのボタンを押してくれたんだね」

  わたしはきらりちゃんが豆腐チャンプルーのボタンを押してくれるなんて思っていなかったので嬉しくなった。

「あのね。お姉さんが豆腐チャンプルーを勧めてきたんでしょ。そのびっくりした顔はなんなのよ」

  きらりちゃんは呆れたと言って両手を広げた。

「だって、豆腐チャンプルーのボタンを押してくれるなんて思っていなかったから嬉しくて……」

  わたしがそう言ってにっこりと笑うときらりちゃんは、

「お姉さん、ちょっと気持ち悪いよ」なんて言うのだからやっぱり憎たらしいよ。

わたしは大人なんだから気持ち悪いよと言われても怒らないんだからね。心の中でそう呟きながらグァバ茶と書かれたボタンを押した。

  カコンと食券の落ちるいい音がした。

「お姉さん、あのさ~席は他にもあると思うんだけど」

  わたしがきらりちゃんの目の前の席に腰を下ろすときらりちゃんはそれはもう嫌そうに眉をひそめた。

「わたしの名前は愛可だよ。よろしくね」

  そう言いながらなんだか美川さんの行動と似てきたなと思うと自分が嫌になるけれど仕方がない。

「……あのね、お姉さんか愛可か知らないけど鬱陶しいんだけど」

  きらりちゃんはピンク色の手提げカバンから筆記用具とノートとそれから教科書を出しながら言った。

「そんなこと言わないで仲良くしようよ」

「愛可って同世代の友達がいないの?  あ、あの変なお兄さんがいたか。類は友を呼ぶんだね」

  なんて言ってクスクス笑うきらりちゃんは憎たらしい。だけど、愛可と呼んでもらえてちょっとだけ嬉しいかも。

  いやいや待てよ……。わたしは小学生に呼び捨てされているんですけど。しかも類は友を呼ぶとは何だ!   美川さんとわたしは全然違うのだから。

「愛可、さっきから顔が笑ったり怒ったりして不気味なんですけど」

「……きらりちゃんちょっと失礼じゃない」

  わたしは、テーブルをバンと叩いた。
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