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第三章 田本和子

罪人はこの部屋でゆっくりしなさい

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「あら、図星かしら?」

  さやさんの真っ赤な唇がクスクスと笑っている。

「……そ、それはそうかも……だけどさやさんには関係ありませんよ」

「確かにわたしには関係ないことかもしれませんね。だけど、わたしは罪人を成敗する仕事をしているので職務を全うしているだけですよ」

「職務を全うっておかしいんじゃないですか?」

「ふふっ、おかしくてもけっこうですよ。とにかく田本さんにそれから野川さんも罪人ですからさや荘でゆっくりとしてくださいね」

「わたしも罪人だって言うんですか!  それとどうしてわたしの名前を知っているんですか?」

  里子が叫んだ。確かにどうして里子の名前も知っているのだろうか?

「そうよ、野川さんも罪人ですよ。だって、麗奈さんをいじめたわよね。罪人のお二人はこの部屋でゆっくり反省してくださいね。あ、それとわたしは罪人の名前はよく知っているんですよ」

  さやさんはまるで悪魔みたいなそれでいて美しい笑顔を浮かべた。

 美しくて綺麗な悪魔は微笑む。その唇に赤リップがキラキラと輝いている。

「わ、わたし帰ります。この家の住人ではありませんから」

  里子は鞄を掴み玄関に向かおうとする。

「里子だけ逃げようとするの?」

「野川さんも逃げたら駄目ですよ」

  わたしは、里子の後を追いかける。

  さやさんは、「二人の罪人よ、この部屋で反省しなさいよ」と言った。

  すると里子は、

「嫌よ!  だってわたしは和子に命令されたから麗奈ちゃんをいじめたのだから。わたしは罪人じゃないよ」

「さ、里子!  それってどういうことかな?  里子も麗奈ちゃんをいじめて喜んでいたじゃない」

「それは……和子ちゃんのことを敵に回したら怖いから……だからわたしは麗奈ちゃんをいじめて楽しいふりをしたんだよ」

  里子は何を言っているんだろうか?  中学校のあの教室で麗奈ちゃんに意地悪をしていた時の里子はキラキラと輝いていたじゃない。あの意地悪な笑顔は何だったのかな?

「里子、嘘だよね。楽しくなかったなんて嘘だよね」

  わたしは、玄関に向かう里子の背中に声を掛ける。

  すると、里子は振り返り、

「わたしは苦しかったよ。麗奈ちゃんの苦しむ姿を見ると辛かったよ。楽しそうに笑っていたのは和子ちゃんに嫌われて麗奈ちゃんみたいになるのが恐ろしかったからだよ」

  と言って泣き笑いのような表情を顔に浮かべわたしの顔を見た。

「友達だと思っていたのに……」

  わたしは、悲しくなるのと同時に怒りを覚えた。

「和子ちゃんのことは好きだったけど大嫌いでもあったよ」
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