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バスは来ない

幽霊を見たかな?

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こんな時でもわたしのお腹は正直で、「ぐーっ」とお腹の音が鳴った。腕時計で現在の時刻を確認すると、十九時だった。

長い長い廊下が真っ暗だったので夜中と勘違いしていた。そういえば夕食もまだ食べていなかった。そろそろ夕食の時間かな?

ヌボボボッ。

「ぎゃっつ!」

暗闇に人の顔が浮かんだ。里美なの?  と一瞬思ったけれど違った。暗闇に浮かんだ、その人物はすみれだった。

里美がまた、戻って来たのかと思いびっくりした。


「あ、未央ちゃん、何をそんなに驚いているの?  夕食の時間だよ~」

すみれが不思議そうに首を傾げながら言った。

「あ、本当に。ちょうどお腹が空いていたんだ」

「じゃあ、食堂に行こう、行こう」

「うん」

今日の夕飯は何かな?  と呟きながら歩くすみれちゃんにわたしは、

「あ、あのさ、白いワンピース姿の女性を見なかった?」と尋ねる。

「白いワンピース姿の女性? 何それ?」

「き、気のせいかもしれないけれど、さっきこの廊下を歩いていたの。白いワンピース姿の女性が……」

すみれちゃんは、「見ていないけど」と答えた。

  
すみれは気がついたらわたしの目の前に現れたけれど、どの方向から来たのかな?

わたしが、考えているとすみれが、

「ねえ、なんなの?  白色のワンピースって、この寒い日にワンピース?  しかも白色?  それって誰だったの?」

すみれは不思議そうな表情だ。

「分かんないよ。ハハハッ、幻覚だったのかな?」

「そうだよ。未央ちゃん、きっと疲れているんだよ。ご飯を食べたら早く寝た方がいいかもね」

「そ、そうかな。だよね……」

「そうだよ、絶対にそうだよ。だって白色ワンピースなんて変じゃないの?」

「そうだよね」

そう思いたい。だけど、あれは幻覚なんかじゃない。それは確かだ。だけど、里美を見たとすみれに言いたくない。

そうだ、他の幽霊の話をすればいいんだ。そうだ、そうだよ。

  
「そうだよ。未央ちゃん変ねー」

と言いながらわたしの横を歩くすみれに、

「ねえ、すみれ、この洋館で、その……。えっと、幽霊みたいなものは見たことはあるかな?」と聞いてみた。

「え、幽霊?  何それ?  見てないよ。それって、大浴場の話と関係があるの?」

「あ、うん。それもあるけど、また別の話で、例えば部屋の中で幽霊を見たとか、変な音を聞いたとかそんなことはないかな?」

変に思われるかもしれないけれど、わたしは聞かずにはいられなかった。これだけ色々な恐ろしい体験をしているのだから。

「部屋で幽霊?  見たことないよ。あ、でもミシミシって音は聞いたかな」

  

「え、すみれ、ミシミシって音を聞いたの?」

わたしは、すみれの肩を揺すった。わたしの勢いにすみれはびっくりしたみたいで、

「もう、未央ちゃんどうしたの? なんか変だよ。ミシミシって音は聞いたかもしれないって感じだよ」

「そ、そうか。ごめんね、興奮しちゃって……」

「ううん、それは全然構わないけど、どうしちゃったの?  心配事とかあるなら聞くから話してね」

「うん。ありがとう。わたし疲れているみたいだね」

「とりあえずご飯だね。ご飯を食べて元気を出そうよ」

「うん」

わたしとすみれは暫くの間、無言で長い長い廊下を歩いた。

里美はこの洋館の何処に潜んでいるのだろうか?

  
わたしは、長い長い廊下を歩きながら考える。あの白いワンピース姿の女性は里美に間違いはなかった。と、いうことは里美はこの洋館の何処かにいるってことなのかな。

だけど、どうしているの?

わたしの記憶はあやふやで霧に覆われているようでハッキリとしないのだ。里美は……。

里美はどうした?

里美はどうした?

駄目だ。考えようとすると頭が割れそうになり痛む。

すみれのミシミシと音がすると言った言葉も少し気になる。

いろいろ考えているうちに食堂に着いた。
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