上 下
37 / 44
仲間達

図書ルーム

しおりを挟む

幽霊かもしれないものや里美にそして、大浴場の件がなければ、仲の良かった友達との合宿みたいな感じで楽しかったのかもしれない。

だけど、今の状況はそんな楽しさなんて微塵もなくて、楽しさとはほぼ遠い状態なのだ。

外にいても寒いねと言い合い、わたしと太郎は洋館の中に戻った。

だけど、やっぱり暇でやることがない。

することも、ないので先程までいた、図書ルームへ行き椅子に座り、ウトウト船を漕いだり、本を読んだりして過ごした。

  
『思い出の遠い国に行きました。たくさんの思いで達が詰まっていました。過去の私や友達がいっぱいいました。あの頃の私は幸せだったなと振り返ります。幸せな日々に帰りたい、帰りたい、帰りたいわ』

重厚な本棚から取り出した本をパラパラと捲る。なんだろこの本、わたしと少し似ているかもしれないなと感じた。

あの頃は幸せだったな……。

わたしは、どうなんだろうか?  果たして幸せだったのかな?

幸せだった、だけど辛かったが正解かな。

  
仲間がいて楽しかった。

みんなと夕暮れまで校庭や公園で走りまわったあの日々達。鬼ごっこ、ジャングルジムのてっぺんまで行き、『世界は俺のものだー』と宣言した太郎君を見上げて、アホだと笑ったり、公園の砂場で泥団子を作り、団子屋さんごっこをして、手も服もドロドロにしてお母さんに叱られた思い出、なんだか懐かしいな。

やっぱり幸せだったよね。

だけど。

  
幸せだった。だけど幸せではなかった。

とても矛盾しているけれど、それがわたしの答えなのだと思う。

『私の宝物、それはあなた。あなたが私の宝物だった。大好きな宝物、大切に大切にしていた宝物。かけがえのないたった一つのものだった。いつも私はあなたに優しくした。あなたが笑うと私も幸せだったの。だけど、あなたがある日それを壊した』

なんだろ?

変な本。わたしは本を机の上に置き、伸びをした。

里美。あなたがいなければ、わたしは、もっと幸せだったのかもしれない。里美のことは好きだけど大嫌いでもあったのだから。

みんなと過ごした学生時代は懐かしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さや荘へようこそ!(あなたの罪は何?)

なかじまあゆこ
ホラー
森口さやがオーナーのさや荘へようこそ!さや荘に住むと恐怖のどん底に突き落とされるかもしれない! 森口さやは微笑みを浮かべた。 上下黒色のスカートスーツに身を包みそして、真っ白なエプロンをつけた。 それからトレードマークの赤リップをたっぷり唇に塗ることも忘れない。うふふ、美しい森口さやの完成だ。 さやカフェで美味しいコーヒーや紅茶にそれからパンケーキなどを準備してお待ちしていますよ。 さやカフェに来店したお客様はさや荘に住みたくなる。だがさや荘では恐怖が待っているかもしれないのだ。さや荘に入居する者達に恐怖の影が忍び寄る。 一章から繋がってる主人公が変わる連作ですが最後で結末が分かる内容になっています。

オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ
ホラー
恐怖の同窓会が始まります。 オレンジ色の提灯に灯る明かりが怖い! 泊まりの同窓会に行った亜沙美は……ここから抜け出すことが出来るのか!帰れるの? 東京都町田市に住んでいる二十五歳の亜沙美は最近嫌な夢を見る。 オレンジ色の提灯に明かりがぽつんと灯りオレンジ色の暖簾には『ご飯屋』と書かれた定食屋。 包丁を握るわたしの手から血がぽたりぽたりと流れ落ちる。この夢に何か隠れているのだろうか? 学生時代のわたしと現在のわたしが交差する。学生時代住んでいたあるのは自然だけの小さな町に同窓会で泊まりで行った亜沙美は……嫌な予感がした。 ツインテールの美奈が企画した同窓会はどこか異様な雰囲気が漂っていた。亜沙美に次々恐怖が迫る。 早く帰りたい。この異様な世界から脱出することは出来るのか。 最後まで読んで頂けるとわかって頂けるかもしれないです。 よろしくお願いします(^-^)/

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

『盆綱引き』

篠崎俊樹
ホラー
福岡県朝倉市比良松を舞台に据えた、ホラー小説です。時代設定は、今から5年前という設定です。第6回ホラー・ミステリー小説大賞にエントリーいたします。大賞を狙いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

暗愚う家で逝く

昔懐かし怖いハナシ
ホラー
 男の子四人が、ある遊園地に来たときの話  彼らは、遊園地の奥ヘ入っていく。  その時、広場を見つけ、そこでボール遊びをしていた。いろんなアトラクションがあったが、何個かの面白い物は、背が足りなくて乗れないためであったからだ。  その近くには、誰も寄り付かないような、暗い木造りの家があった。二階のあるそこそこ大きいものだった。普通の家だ  さぁ、その家の真実が今明かされる。命をかけた、9時間の出来事。今思えば、悲しく、恐いものだった…  フィクションです。

迷い家と麗しき怪画〜雨宮健の心霊事件簿〜②

蒼琉璃
ホラー
 ――――今度の依頼人は幽霊?  行方不明になった高校教師の有村克明を追って、健と梨子の前に現れたのは美しい女性が描かれた絵画だった。そして15年前に島で起こった残酷な未解決事件。点と線を結ぶ時、新たな恐怖の幕開けとなる。  健と梨子、そして強力な守護霊の楓ばぁちゃんと共に心霊事件に挑む!  ※雨宮健の心霊事件簿第二弾!  ※毎回、2000〜3000前後の文字数で更新します。  ※残酷なシーンが入る場合があります。  ※Illustration Suico様(@SuiCo_0)

小さな鏡

覧都
ホラー
とある廃村の廃墟検証の映像配信者の映像から始まる恐怖のお話です。

無名の電話

愛原有子
ホラー
このお話は意味がわかると怖い話です。

処理中です...