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仲間達
食堂と仲間達とわたしの記憶
しおりを挟む食堂に行くとテーブルの上には昼食が並べられていた。オムライスにサラダ、そして、わたしと花音ちゃんが席に着くと、里見さんが、「はい、どうぞ」とコンソメスープを持ってきてくれた。
「ありがとうございます」とわたしと花音ちゃんは声を揃えて言った。
「雪が降りや止まないですね」
里見さんは恨めしそうに、窓の外を眺めた。
本当にいつになったら帰れることやらと途方にくれそうになる。
太郎君は食堂にやって来るなり、オムライスをムシャムシャガツガツ食べた。
「いやーもうお腹がペコペコでしたよ。里見さん、ありがとうございます」
太郎君の笑顔に里見さんは、「こちらこそ、嬉しそうに食べて頂き作り甲斐がありますよ」と微笑んだ。
しばらくすると、すみれに京香ちゃんが食堂にやって来て、その後少し遅れて春花ちゃんがやって来た。
「いただきます」とみんなで手を合わせて食事を始めた。(一人だけ完食済みがいるけどね)
オムライスはやはり期待通りふわふわふんわりしていて美味しかった。
わたしの左隣に座るすみれが、「このオムライス最高だね。帰ったら、『卵ランド』に行こうね」と言って笑いかけてきた。
『卵ランド』とはわたしとすみれが時々行く卵料理のレストランのことだ。
すみれ。藤川すみれとは今も時々、仕事の帰りや休みの日に会い、ご飯に行ったりしている。
子供の頃、すみれと一番仲が良かったのかというとそういうわけではなくて、高校が唯一すみれとだけ同じだったからだ。
高校生の頃のわたしとすみれは、二人して、ポニーテールにしていた時があり、『双子みたいだね』と言われたりした。まったく顔は似ていないのにね。
『双子みたいだね』『双子みたいだね』、あれ? どうしてだろうか?
すみれと双子みたいだねと言われたことは記憶にあるのに、どうしてなんだろうか……。
この当時からすでに、里美の記憶がなかったような気がする。ああ、でもよく分からない。記憶があやふやでなんだか霞んでくる。
やっぱり里美のことを思いだそうとすると、頭が痛くなる。とにかく、すみれとは楽しい高校生活を送れた。
小学生の時はすみれとは、それほど仲が良いわけでもなくて、確かすみれは春香ちゃんと仲良しだったかな?
「未央ちゃん、何をぼけ~っとしてんのよ」
すみれの言葉で気がついた。わたしはフォークを手に持ったままの体勢でぼーとしていたではないか。
何をやっているんだ。わたしは。
「未央ちゃんってば笑える。面白い~」とわたしの斜め前に座る京香ちゃんは笑って手を叩いた。
「京香ちゃん、酷いよ~」
わたしは、おどけた感じで答えたけれど、本当は笑っている余裕なんてない。だって、わたしは自分の脳みそがどうかしてしまったのかもしれないと本気で悩んでいるのだから。
筒地京香。京香ちゃんは、この洋館のメンバーの中でも話しやすい女の子だ。小学校低学年時代は仲良しだった。
そんな京香ちゃんとわたしは、消しゴムの交換やノートやシールの交換もした。京香ちゃんは持ち物のセンスがよくて、可愛らしいノートやシールをたくさん持っていた。
交換したノートやシールは交換ファイルに入れて眺めて喜んだ。
京香ちゃんには、小学校低学年時代に、『わたしと里美どっちが大好き?』と聞いた。
京香ちゃんはほんの数秒間だけ考えて、『未央ちゃん』って答えてくれた。
その答えを聞いたわたしは、天にも昇る気持ちになった。
この日は一日中嬉しくて、喜びに体が包まれた。そんな幸せな気持ちになった。
里美に勝ったと嬉しくて堪らなかった。
ご飯を食べ終えてみんなでどうしたものかと、窓の外を見る。だけど何一つ変わっていない。真っ白な世界、むしろ昨日よりも確実に降り積もっている。
あまりにも雪が降り積もり視界が真っ白に霞んで見える。もう何もかもが『白』一色の世界だ。
見る分には良いけれど、これでは明日も帰れそうにない。困ったものだ、どうしたら良いのかな。
「このままだとバス、来ませんよね?」
太郎が里見さんに聞いた。
「恐らく……。ここまで降るとは思いませんでした」
「まあ、仕方ないよね。外でも見に行くかな」
そう言って太郎は食堂を出て行った。
わたしも外の様子が気になるので見に行くことにした。部屋に戻り上着を羽織り玄関の扉を開く。すると、
「うわー、何これ?」
だって、扉を開いたその先にある世界は、雪、雪、雪で扉はかろうじて開いたけれど、この洋館が雪ですっぽりと覆われているのだから。
「凄いよな……」
突然、後ろから太郎の声がした。振り返ると、太郎が寒そうに震えながら苦笑いを浮かべていた。
「あんまりにも凄い雪なので、本当にびっくりした」
「だよな。仕事を休めるのはいいけど、退屈なのと、あの風呂のこともあるし少し憂鬱だな」
「そうだね……」
本当にそうだよ。里美のことだけではない。あの大浴場は一体なんだったのだろうか?
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