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仲間達

春花ちゃん

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「あ、い、う、え、お、い、う、え、お、あ~」と廊下に響き渡る声。

「この声は、春花ちゃんだよね?」

花音ちゃんは、「お昼の準備が出来たって伝わっていなかったのかな?」と呼びかけた。

「春花ちゃーん、発声練習中で申し訳ないけど、お昼が出来たって~」

花音ちゃんの大きな呼びかけに、春花ちゃんは、「後ですぐに行くから先に行っててね」

春花ちゃんは美しい美声を響かせ答えた。


  

桜川春花。

春花ちゃんは名前と本人の容姿が一致している女の子だ。春花ちゃんは幼稚園の頃から既にまわりの子達との違いを見せつけていた。

あどけない表情のその頃から誰よりも輝いていた。

幼稚園の学芸会で、春花ちゃんは、主役に抜擢された。それは当たり前だといえば当たり前だ。

お姫様が主人公のその物語は春花ちゃんのためにあるような物語であった。

ピンク色の輝く舞台に綺麗なピンク色のドレス姿の春花ちゃん。頬にはほんのりピンク色のチーク、なんて天使みたいで愛くるしいのだろうかとわたしもそう思ったし、みんな天使が舞い降りてきたと言っていた。

  
舞台の上から春花ちゃんが台詞を語る。その声は可愛らしい、だけど当時からよく通る声だった。

春花ちゃんに直接聞いたことはないけれど、もしかするとこの頃から春花ちゃんは、女優さんに憧れていたのかもしれない。

舞台の上でも地上でも輝きを見せる春花ちゃんが、わたし達の仲間でいるのも不思議だった。

他のグループの子達からも、いいなぁいいなぁと言われてまるで自分のことを言われているかのように鼻高々な気分になったものだ。

そんな春花ちゃんが現在は女優の卵なんだ。輝いている春花ちゃんでさえも一気に華々しくとはいかないものなんだな。

そんなことを思いながら、長い廊下を歩いた。
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