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雪降る洋館に閉じ込められた
雪
しおりを挟む「うわぁー凄い雪」
と皆が声を上げた。
「この雪では恐らくバスは来ないと思いますよ」
里見さんは、「豪雪地域ではありますが、ここまで降るのは珍しい」と窓の外をもう一度目を向けながら言った。
「歩いて帰ることは出来ませんか?」
わたしは無理だとは思いながらも、もうこれ以上一日だってここにはいたくないと思ったので、藁にでもすがる思いで聞いた。
「それは……。やはり無茶だと思いますよ」
「そ、そうですよね……」
どう考えてもこの雪の中を都会育ちのわたしが歩いて山を下り帰るなんて、無理だ。
どうしようもないこの自然状況に、溜め息が出てしまいがくりと肩を落とした。
雪が降り積もりやはりバスは来なかった。わたし達は、この洋館に閉じ込められてしまった。
帰りたいのに帰れない辛い状況だ。
家から持ってきた本を図書ルームの椅子に腰を下ろしペラペラ捲り読むけれど、全然面白くもない。本を読むことにも飽きてしまう。
わたしは本をテーブルに投げ捨て、大きく伸びをする。
「ああ、退屈だな」と声が出る。足をぶらぶらさせながら、もう一度、「退屈~」と言った。
スマホも繋がらないしやることがないではないか。
わたしが退屈で時間をもて余していると、花音ちゃんがやって来て、
「暇すぎるよね。ポテチどうぞ」
花音ちゃんはポテトチップスの袋をわたしに差し出した。
ポテチを何袋持ってきたのかな? とも気になりながら、わたしは有り難くポテトチップスの袋に手を突っ込んで、バリバリと食べた。
「あーあー」
図書ルームに、何だろうか? 発声練習みたいな大きな声が聞こえてきた。
「春香ちゃんが演劇の発声練習をしているみたいだね」と花音ちゃんが言った。
「あ、そうだったよね。確か、春香ちゃんは女優さんの卵だったもんね」
花音ちゃんは、ボリボリポテトチップスを食べる手を休めないで、
「春香ちゃんはいいよね。美人で才能もありそうだしね」
やっぱり花音ちゃんもわたしと同じ風に感じているんだ。わたしには、才能もなければ溢れるばかりの美貌ない。ああ、なんだかつまらない。
「それはそうと、話は変わるけれど、さっき話していた大浴場の事なんだけど、赤黒いお湯が未央ちゃん達を襲ってきたって話は本当の事なんだよね?」
花音ちゃんは真剣な表情で尋ねた。
やっぱり、気になるよね。自分達が使う大浴場なんだから。
「もちろん、本当の事だよ。もう、それはそれは恐ろしかったんだよ。赤黒いお湯がゴーゴーゴーッとわたし達に向かってきた時なんて、もしかしたらこの赤黒いお湯に呑み込まれて死んでしまうかもって半分覚悟したぐらいなんだよ」
思い出すだけでもそれは恐ろしくてゾクゾクする。鳥肌も立ちそうだ。
「そうなんだ……」
花音ちゃんは、天井の方に目を向けながら、何やら考えている様子だ。
「わたしも大浴場に見に行こうかな? 気になるよ」
なんてとんでもない発言を花音ちゃんはするではないか。
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