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雪降る洋館に閉じ込められた
そして
しおりを挟む「未央ちゃん、昨日のことは皆に話しておいたよ」太郎は、言った。
「あ、そうなんだね……」
わたしは太郎の顔を見て頷いた。
その時、わたしの隣に座る京香ちゃんが、わたしの肘をつつき、「やっぱり本当なの?」と尋ねた。
わたしは、サンドイッチをお皿の上に置いて、「そうなんだよ。赤黒いお湯がわたし達に向かってきたんだよ。もう恐ろしくて怖くてめちゃくちゃびっくりしたんだから」とわたしが答えると、
「太郎の冗談じゃなかったんだ」と、今まで黙っていたすみれちゃんが言った。
すみれちゃんは、どうやら太郎の話を半信半疑で聞いていたようだ。
すみれちゃんの言葉に太郎は、「ちょっと酷くねえか」
太郎はすみれちゃんを睨み付ける。
「だって、太郎は学生時代から冗談ばっかり言ってたじゃん」
確かにすみれちゃんの言う通りだった。
それから暫くして、厨房にいた里見さんが大広間に入ってきた。そして、
「先程、わたしもそのお話を少しお聞きしたのですが、本当なんですか?」とわたしに尋ねた。
「はい。本当です。あの、聞きたいのですが、今までにもこのような現象はあったのでしようか?」
わたしが里見さんに聞いてみると、
「いいえ、わたしは今までは一度もそのようなお話は聞いたことはありませんよ」
口髭を触りながら里見さんは答えた。
そうなんだ。今まではこんな現象はなかったんだ。ではどうして、今回はこんな不気味なことが起きたのだろうか? 不思議でならなかった。
食後の紅茶を飲みながら、わたしは里見さんに聞いた。
「あの、里見さん、一日早いですが今日帰らせてもらうことはできませんか? わたし怖くて申し訳ないのですが」
あの子里美の話を出さなくても帰りたい理由があり、太郎という目撃者がいることもあるので帰る理由ができた。
「うーん、お気持ちは分かりますが、それがですね、外を見てください。とても帰れるような雪じゃないのですよね」
そう言いながら里見さんは、カーテンを開けた。
窓の外に視線を向けると雪がこんもりと積もり、まるでこの洋館が雪ですっぽりと覆われているようだった。もう真っ白な雪しか見えない状態だった。
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