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真実とは恐ろしいもの
残酷
しおりを挟む「本物の悪魔……」
そんな、そんなことをわたしがしたなんて、そんな……。
『史砂ーーーーー、お前は悪魔だ、この上ないほど醜い悪魔なんだ』
カラスの低くてよく通る声は、地上を引き裂くような声で言った。
わたしが、そんなことをしたなんて信じられない。
「わたしが、本当にあなた達の卵を割ったの?」
「覚えていないなんて言わせないぞ、史砂」
お前は、残酷な少女なんだ!
よく、覚えてはいないけれど、何となく、白いワンピース姿のわたしと、半ズボン姿のお兄ちゃんの姿が頭の中に浮かんだような気がした。
そして、わたしは、ニンマリと笑い卵をぽーいと放り投げた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい!」
わたしは、自分のしてしまったことに驚きを隠せないのと同時に、カラスになんて酷いことをしてしまったんだという申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
『史砂、謝ってもらっても俺達の命は戻って来ないんだ!!』
カラスは、グゥガーグガーガァーと鳴いた。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい」
カラスは、謝るわたしを鋭い視線で睨み付けた。
『そして、史砂お前を』とカラスが言ったところで、お兄ちゃんの声が、
『史砂は、あの頃は本当に小さな子供だったんだ、小学校二年生だったんだ、許してやってくれ』
と叫んだ。
『そんなことは、俺達には関係ないな、それに……』
『頼む、頼むからやめてくれ、お願いだからやめてくれ』
お兄ちゃんは、必死になりカラスに頼んだ。
お兄ちゃん、わたしは、どうしようもない子だったんだよ。そんなわたしを庇う必要なんてないのに。
『史敏、お前は、俺と契約したよな?』
カラスは低くてよく通る、ゾクゾクする声で言った。
『やめてくれーーーーーーーーーーーー!!』
お兄ちゃんのこの世の声じゃないほどの悲痛な叫び声が聞こえた。
そして、わたしの学校鞄からお兄ちゃんの日記帳が飛び出した。
その日記帳は、パラパラと捲れた。
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