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カラスと日記帳

休日

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  今日は休日で学校は休みだ。

  何もやる気がおきないので一日中ごろごろしていようかなとも思ったけれど、眠たくもないし眠れないので、わたしは むくりと起き上がった。

 お気に入りの猫の鞄にお兄ちゃんの日記帳をいつでも読めるように入れた。

  適当にその辺りをブラブラしようかなと思い、一階に下りる。

「あら、史砂ちゃん出かけるの?」

  お母さんは雑巾を手に持っている。掃除中だったみたいだ。

「うん、ちょっとお菓子でも買いに行こうかな」

「気をつけていってらっしゃい」

  お母さんに見送られてわたしは、外に出た。


  
  外に出ると秋の空が高く澄み渡り広がっていた。

  綺麗な青空とは対照的にわたしの心は黒々と濁っていた。

  猫の鞄の中にはお兄ちゃんの日記帳が入っている。手で触れて日記帳が入っていることを確認する。

 わたしは、てくてく適当に歩いた。

  
  お母さんにお菓子でも買いに行って来ると言ったのを思い出した。

  この町でお菓子を買えるところといえば近所の商店や小さなスーパーにそれから駄菓子屋さんだ。

  駄菓子屋、そうだよ。

  駄菓子屋といえば、あの事故があった日にお兄ちゃんと一緒に行こうとした、駄菓子屋を思い出した。

  
  あの事故を思い出すと胸がきゅっと痛くなった。

  確か、あの事故があった日は雲が優勢な空でどんよりとしていた。

  それに引き替え今日は、あの時の悲しい空を洗い流すように綺麗に晴れ渡っている。

  だけど、わたしの心はあの日の事故を思い出し、気分がすぐれなくなってきた。もう、考えない、考えない。

  そう思うけれど、やっぱり考えてしまう。

  
  近くの商店に行こうと思い歩いていたのに、何故か足が勝手に駄菓子屋へと向かっていた。

  もうどうしてよ。わたしは、ぽつりと呟いた。

  お兄ちゃんが事故にあった現場が見えてきた。そこには、花束やお兄ちゃんが好きだったお菓子やペットボトル等が置かれていた。

  まだ、新しいものみたいなので誰かが置いてくれているんだろう。そう思うと胸が熱くなった。

  
  わたしが走ったりしなければ、あんな酷い事故は起こらなかったはずだ。

  今更考えても仕方がないと思うのに考えてしまう。自分を責めてしまう。

  悔いても悔いても時間は巻き戻されたりはしないのに。

  久しぶりにあの駄菓子屋さんでお菓子を買ってみようかなと思ったその時、カラスが一羽飛んできた。

  あっ、カラスがわたしに近づいてきた。

  
  また、あのカラスなの?

  やっぱり、あのカラスのようだ。

  バサバサバサバサもの凄い勢いで飛んできた。そして、前足でわたしのおでこを蹴飛ばした。

「痛いよ、止めてよ」わたしは叫んだ。

  わたしが叫んでもそれでもきっと攻撃してくるかと思ったのにカラスはバサバサと飛び去った。

  なんだって言うのよ。あんなカラスなんて気にしない、気にしない。
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