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墓地で肝試しと悪魔の囁き
どうして
しおりを挟む気がつくと、わたしは、地面に横たわっていた。
強烈な風だった。何が起きたのかよく分からない。顔を上げたわたしはびっくりした。
砂ぼこりが舞っている。
そして……。
わたしの見上げた先には、あの展望台があったのだから。どうして、わたしは展望台の下に居るの。
あまりの恐怖で背中がゾクゾクする。
展望台が白い靄とともにそこにある。夜の闇と展望台。
どうして?
川沿いの道を歩いていたはずなのに。怖い、涙が出そう。誰か助けて。
だけど、周りには誰もいない。ゆかりと真由は何処に行ったの。
ここには、わたしと展望台と静寂しかない。
暗い闇と展望台しかないのよ!!!
どれぐらいの時間地面にうつ伏せになっていただろうか。
数分、それとも数時間、とにかくわたしとしては長い時間同じ体勢のまま動けなかった。
わたしは、よろよろと立ち上がり視線を展望台へと向けた。
展望台の屋根にカラスが一羽留まっていた。
カラスとわたしと展望台……。
そして、静寂。
何かが起きそうで体が震える。怖くて恐ろしくてガタガタガタガタと震える。
わたしに一体何が起きているの。
何が……。
お兄ちゃん、助けて。お兄ちゃん助けてと叫びたくなる。だけど、お兄ちゃんはもういない。
暗い闇とカラスと静寂がただただ恐ろしくてわたしは地面に膝をつきうずくまった。
『史砂、待たせたな』
低くてよく通る声の主の声が聞こえてきた。
わたしは、震える体を起こして逃げ出そうとしたけれど、そんなに簡単には逃がしてはくれないようだ。
『史砂、待つのだ』
その声から逃げようとしているのに体が動かない。まるでわたしの体に鉛でも巻きついているのかなと思うほど体が動かない。
『史砂、待たせたな』
低くてよく通る声の主の声が聞こえてきた。
わたしは、震える体を起こして逃げ出そうとしたけれど、そんなに簡単には逃がしてはくれないようだ。
『史砂、待つのだ』
その声から逃げようとしているのに体が動かない。体が鉛のように重く感じて動かない。逃げたいのに逃げられない。
『何故逃げるんだ? わたしは、史砂お前の味方なんだぞ』
そんなわけない。わたしを苦しめているのに。
「と、友達を犠牲にしろなんて言うあなたが味方であるはずなんてないんだから」
わたしは、声を張り上げて言った。
『そうかな? だけど、史砂、お前の大好きなお兄ちゃんが戻って来るんだぞ』
声の主は、アッハハハハハハハ――――と笑った。
わたしは、この声にじりじりじりじり追いつめられていく。
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