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英美利Sied

2英美利の休日

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「奈美ちゃん久しぶり。英美利だよ」

「わぁ~久しぶりだね。英美利ちゃん元気だった?」

  電話の向こう側から聞こえてくる奈美ちゃんの声は弾んでいる。声を聞いただけで奈美ちゃんの天使みたいな笑顔が目に浮かぶ。

「うん、まあ元気だったよ。奈美ちゃんも変わらず元気そうだね」

「うん、元気もりもりだよ~」

「それは良かった。ドラマも順調みたいだね」

  わたしは、奈美ちゃんの可愛らしい女性教師として活躍しているドラマを思い出しながら言った。

「うん、共演者も良い方ばかりで恵まれているよ。あ、そうそう英美利ちゃんの泥まみれになる熱演ぶりも見たよ~」

  奈美ちゃんは楽しそうな声で笑っている。まったく余計なことを言うんだから嫌になる。でも、奈美ちゃんに悪気がないことは中学時代からの長い付き合いで分かっている。

  だけど、やっぱり頭にくる~。

  どうして、わたしは泥まみれの演技を熱演して、奈美ちゃんはキリッとした女性教師役を熱演しているのかと思うとイライラする。

  なんて、言っている場合ではなかった。

  順子ちゃんのことを話さなくては。

  「あのね……順子ちゃんのことなんだけど」

 「うん?  順子ちゃんがどうしたの?」

  奈美ちゃんの声は少しだけ低くなった。

  順子ちゃんのこととなるとやはり奈美ちゃんも不安な気持ちになるのだろう。

「順子ちゃんに会ってくれないかな?」

  わたしがそう言うと、

   電話の向こうで奈美ちゃんの息を呑む音が聞こえた。

「……あ、うん。いいよ、順子ちゃんにわたしも会いたいって思っていたよ」

  奈美ちゃんは明るい声で言った。

「良かった」

  わたしも明るい声を出した。

  その後、わたしと奈美ちゃんは近況報告をし合った。相変わらず奈美ちゃんは女優として活躍していて羨ましくてそして、少し悔しかった。

  わたしもコメディ女優として活躍しているかもしれないけれど、わたしはこの美貌を活かす仕事がしたいのだ。

  まあ、そんな感じで楽しいのか楽しくないのかよく分からない気持ちになり電話を切った。

  
  それから数日後。奈美ちゃんと順子ちゃんの対面の日がやって来た。

  わたしは朝からソワソワしていた。あっちへうろうろこっちへうろうろとクマさんのように部屋の中を歩いた。

「わたしがどうしてソワソワしなきゃいけないのよ!」

  わたしは、がるる~と吠えながらフランスパンをかじった。

「英美利様、どうされましたか?」

  雪本さんは不思議そうに首を傾げながら言った。

「うん、雪本さんもこの前会った順子ちゃんと奈美ちゃんの対面の日なのよ」

「あっ!  あのちょっと心が病まれている順子さんとですか……」

「うん、もうかなり心の病んだ順子ちゃんだけどね」

  わたしはフランスパンを力強くかじった。

  どうか順子ちゃんと奈美ちゃんの対面がうまくいきますように。わたしはフランスパンを力強くかじりながら祈った。
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