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英美利ちゃんは好きだけど嫌い

お姉ちゃん

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「お姉ちゃん、ちょっとやめてよ!  英美利ちゃんに失礼だよ。それに雪本さんにもちゃんと挨拶をしてよ」

  わたしは、笑うお姉ちゃんの顔をじっと見て言った。けれどお姉ちゃんは、プイとわたしから顔を逸らした。

「ちょっと、順子ちゃんわたしがお姫様気取りって何よ!」

  英美利ちゃんのその声は不機嫌そのものだ。これはやっぱり怒るよね。お姉ちゃんが悪いと思う。

「ふん、本当のことじゃない!  英美利ちゃんは、今も昔もお姫様気取りだよ」

  お姉ちゃんは鋭い視線で英美利ちゃんを睨んだ。

「あっそ、お姫様気取りでも何でもいいわよ!  順子ちゃんは、わたしのようになれないから嫉妬しているんだね」

「……な、何ですって?  ち、違うわよ」

  お姉ちゃんはそう言って俯いた。

「何が違うのよ?  どうして順子ちゃんはわたしにつらく当たるのよ?」

  英美利ちゃんは、ふぅーと溜め息をついた。

 「つ、つらくなんて当たってないよ……けど、英美利ちゃんは自分のしてきたことなんてまるでなかったことにして、楽しそうにコメディ女優なんてやってるから頭にくるんだよ!」

  お姉ちゃんは、そう言って英美利ちゃんをキッと睨んだ。

  やっぱりお姉ちゃんは、過去のことにとらわれているんだ。今を生きていない。ずっと、ずっと、お姉ちゃんは学生時代のあの頃に心があるんだ。

  そんなお姉ちゃんのことを可哀相だと思うけれど、それと同時にどうして過去に拘るのかなと思った。

「順子ちゃん……いつの話をしているのかな?  奈美ちゃんのことかな?  わたしは意地悪したことだったらちゃんと謝ったよ。順子ちゃんはどうして前を向かないの?」

「そ、それは……」

  お姉ちゃんは、そう言って黙ってしまった。

  お姉ちゃんは寂しい人だ。

  
  奈美ちゃんは、お姉ちゃんの中学時代のクラスメイトだった。お姉ちゃんは、奈美ちゃんのことが大好きで好きだからこそ憎くて意地悪をしていた。

  それは、英美利ちゃんも同じであり友達になりたいけれど素直になれず意地悪をしていた。

  そんなお姉ちゃんと英美利ちゃんは、意気投合して二人で組んで奈美ちゃんに意地悪をしていた。

  そのことを知った時のわたしは、驚きのあまり言葉が出てこなかった。

  わたしは、お姉ちゃんのことも英美利ちゃんのことも大好きだった。それなのにあんまりだよと悲しくなった。

  それを知ったあの日のことをわたしは今になっても忘れられない。

  英美利ちゃんは、自分のしてきたことを悪かったと認めて奈美ちゃんに謝り、今は友達になった。

  だけど、お姉ちゃんはあの頃から一歩も前に進んでいない。

  そんなお姉ちゃんを助けてあげたいけれど、わたしはどうすることも出来ない。
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