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お姉ちゃんと英美利

どうしたらいいの?

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  わたしは、慌てて三階の角部屋に向かう。

「成田さ~ん、成田葉月さんはいますか? 
成田葉月さ~ん。成田葉月さんはお留守ですか?  葉月さ~ん、葉月さ~ん、成田葉月さ~ん 」

  ドンドンドン!  ドンドンドン!  ドンドンドンドン!

  ドンドンドンと扉を何度も何度も激しく叩く音とわたしの名前を大きな声で呼び叫ぶその声が聞こえてきた。

  うわぁーこの声は……。

   これは大変だ。勘弁してよとわたしは角部屋に向い走る。近所迷惑だよ。

  わたしの部屋の前に辿り着くと、手に真っ赤なバッグを持ちグレーのワンピース着た女性が立っていた。

「お姉ちゃん!  うるさいよ、お願いだから部屋の前でさけばないでよ~近所迷惑だよ」

  わたしは眉根を寄せながら言った。

「あ、葉月ちゃんだ~」

  わたしの声に振り返ったお姉ちゃんの顔は、さっきまで泣いていたのだろう目が真っ赤だった。けれど、わたしの顔を見るとパッと花が開いたような笑顔になった。

  「葉月ちゃんだじゃないわよ。取り敢えず部屋の中に入って!」

  わたしは、にっこりと笑うお姉ちゃんの腕を掴んだ。

「ちょっと葉月ちゃん痛いよ。久しぶりに会ったのに何よその顔は怖いよ。お姉ちゃ~ん久しぶりって言ってくれるのが普通じゃない?  葉月ちゃんは冷たい、冷たい、冷たいよ……葉月ちゃんが冷たいよ……」

  お姉ちゃんはわたしのことを冷たいと言ったかと思うと、うわぁーん、うわぁーんと泣き出した。

「ち、ちょっとお姉ちゃん!  泣かないでよ……」

  わたしは、慌てて鞄から鍵を取り出し部屋の扉を開けた。そして、お姉ちゃんの腕をグイッと引っ張り部屋の中に押し込んだ。

「葉月ちゃんは、わたしに会いにも来てくれないよ~冷たい、葉月ちゃんは本当に冷たいよ~」

  部屋に入ったお姉ちゃんは、

  床にしゃがみ込み、うわぁーんうわぁーんと泣きながら床をバンバン叩いた。お姉ちゃんの真っ赤なバッグは床に転がっている。

  わたしはどうしたら良いのやらとその場に立ち尽くした。

  「ねえ、お姉ちゃん。お母さんが心配しているよ。何かあったの?」

  わたしは、お姉ちゃんにティッシュペーパーを差し出しながら言った。

「どうして心配するのよ?  わたしは大人だよ。葉月ちゃんなんて一人暮らしをしているんだよ。毎日家に居ないのよ。これって変じゃない?  不公平だよ」

  お姉ちゃんは、わたしが渡したティッシュペーパーで鼻をチーンとかみながら言った。

「……それは、わたしは一人暮らしをしているから家に居ないのは当たり前だけど……お姉ちゃんは実家に住んでるのに帰ってこないからお母さん心配しているんだよ」

「だから、それがおかしいのよ!」

  お姉ちゃんは泣いていたかと思うと今度は鋭い目つきでわたしを睨んだ。

「……」

  何だろう?  お姉ちゃんは一体どうしたというのだろうか?

「葉月ちゃんはいいよね。あっさり一人暮らしをしちゃってね。わたし、一人暮らしをしたいと言ったのよ。そしたら、お母さんが駄目だって言うんだよ。ねえ、葉月ちゃんどうしてかな?」

  お姉ちゃんは、わたしの目をじっと見つめた。その目には哀しみの色が見え隠れしていた。

「それは、その……」

  なんて答えたらいいのか分からないよ。
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