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いよいよ始まる
雑草抜き
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「ちょっと、成田さん! あなたは何をしているのかしら?」
雪本さんの甲高い声が聞こえてきた。
わたしは顔を上げて、「えっ? 何をって雑草を抜いていますけど」と答えた。
「成田さんちょっといい。雑草の根を途中でプツンと切っているわよ」
雪本さんはわたしの隣にしゃがみわたしの抜いている雑草を指差して言った。わたしは自分の手元を確認する。すると確かに雪本さんに言われた通り雑草の根が途中でプツンと切れていた。
「……すみません」
「本当に雑草抜きもできないのね」
雪本さんは息を大きく吐いた。
「すみません……」
わたしは小さく体を丸めて謝った。
「困った人ですね。よく見ていてね」
雪本さんは雑草の根元をしっかり持った。そして、「葉っぱじゃなくて根元をしっかり持ち上に向かってまっすぐ抜くのよ」と言いながら雑草を上手に抜いた。
その姿はメイド服を着た魔女のように見えた。
わたしは雪本さんに言われた通り雑草を丁寧に根元から抜いた。すると雑草は綺麗に抜けた。
「成田さんもちゃんとやればできるでしょう。雑草がボーボーに生えている芝生なんて英美利様には似合わないのでこれからも一緒に頑張って雑草と戦いましょうね」
雪本さんは胸の前で拳を握りにっこりと微笑んだ。
「……あ、はい」
どうして英美利ちゃんのために雑草と戦わなければならないのよと心の中で思ったけれど勿論声に出せない。
泥で汚れた自分の手の平に目を落しわたしは小さく息を吐いた。爪の間にも泥が入っている。
英美利ちゃんは今頃綺麗な服を着て華やかな笑顔を浮かべているのかなと思うと羨ましいと言うよりも自分が情けなく思えてきた。
「成田さんどうしたの?」
雪本さんは不思議そうにわたしの顔を見た。
「いえ、何でもありません」
わたしは、曖昧な笑顔を浮かべた。
雪本さんの甲高い声が聞こえてきた。
わたしは顔を上げて、「えっ? 何をって雑草を抜いていますけど」と答えた。
「成田さんちょっといい。雑草の根を途中でプツンと切っているわよ」
雪本さんはわたしの隣にしゃがみわたしの抜いている雑草を指差して言った。わたしは自分の手元を確認する。すると確かに雪本さんに言われた通り雑草の根が途中でプツンと切れていた。
「……すみません」
「本当に雑草抜きもできないのね」
雪本さんは息を大きく吐いた。
「すみません……」
わたしは小さく体を丸めて謝った。
「困った人ですね。よく見ていてね」
雪本さんは雑草の根元をしっかり持った。そして、「葉っぱじゃなくて根元をしっかり持ち上に向かってまっすぐ抜くのよ」と言いながら雑草を上手に抜いた。
その姿はメイド服を着た魔女のように見えた。
わたしは雪本さんに言われた通り雑草を丁寧に根元から抜いた。すると雑草は綺麗に抜けた。
「成田さんもちゃんとやればできるでしょう。雑草がボーボーに生えている芝生なんて英美利様には似合わないのでこれからも一緒に頑張って雑草と戦いましょうね」
雪本さんは胸の前で拳を握りにっこりと微笑んだ。
「……あ、はい」
どうして英美利ちゃんのために雑草と戦わなければならないのよと心の中で思ったけれど勿論声に出せない。
泥で汚れた自分の手の平に目を落しわたしは小さく息を吐いた。爪の間にも泥が入っている。
英美利ちゃんは今頃綺麗な服を着て華やかな笑顔を浮かべているのかなと思うと羨ましいと言うよりも自分が情けなく思えてきた。
「成田さんどうしたの?」
雪本さんは不思議そうにわたしの顔を見た。
「いえ、何でもありません」
わたしは、曖昧な笑顔を浮かべた。
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