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美衣佐がわからない
再び美衣佐Side
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★
二階に辿り着くとわたしは木製の扉の前で深呼吸をする。当近さんとお兄ちゃんはこのカフェで何を話していたのだろうか。ちょっと気になる。
わたしは、木製の扉を開けた。ドアベルががカランカランと鳴る。
「いらっしゃいませ~」と美間さんの明るい声が聞こえてきた。
店内は今日も木の温もりを感じるゆったりした空間になっていた。お客さんは年齢も性別も様々でけっこういた。
「あら、美衣佐ちゃんじゃない。こんばんは」
「美間さんこんばんは」
わたしは、店内のカウンター席に目を向けたのとほぼ同時にお兄ちゃんが振り向いた。
「あ、美衣佐」とびっくりしたように目を丸くした。
「お兄ちゃん今日はお客さんとして来たんだね?」
わたしは、お兄ちゃんの左隣のカウンター席に腰を下ろす。きっと、さっきまで当近さんが座っていた席だ。
「うん、そうだよ」
「ふ~ん、そうなんだね」
「美衣佐ちゃんお冷やとメニュー表をどうぞ」
美間さんがやって来てわたしの目の前にお冷やとメニュー表を置きパタパタと厨房へ戻った。
「お兄ちゃんもいるから海老ドリアでも食べようかな。どうせお母さんは帰り遅いだろうしね。お兄ちゃんも海老ドリア食べない?」
わたしは開いたメニュー表の海老ドリアを指差し言った。
「あ、海老ドリアか……それさっき食べたから違うメニューにするよ」
「え! お兄ちゃん海老ドリア食べたの? それって当近さんとかな?」
「うん、そうだよ。って美衣佐どうして当近さんが来てたって知っているんだ?」
「お兄ちゃんってばどうしてそんなに驚いているのかな? 今、そこの階段で当近さんとすれ違ったんだよ」
わたしは口元に手を当ててクスクス笑った。
「そっか、そうなんだね」
お兄ちゃんのその目はちょっと泳いでいるように見えた。けれど気のせいかな。それより、
「ねえ、お兄ちゃん海老ドリアはわたしとだけ食べるって決めてなかった?」わたしは頬をぷくっと膨らませ言った。
「え? そんなこと言ったかな?」
「言ったよ。大好きな海老ドリアはわたしとお兄ちゃんの特別メニューにしようねって」
「そうだったか。美衣佐ごめんね」
わたしはお兄ちゃんが謝ってくれたので許した。わたしは海老ドリアを注文して、お兄ちゃんはナポリタンパスタだ。
きっと、当近さんとも笑顔で食事をしたはずだけど、お兄ちゃんとこのニコニコカフェで食事をする時間はとても幸せだった。
海老ドリアの海老はぷりぷりしていて美味しくて濃厚なホワイトソースもチーズも最高だった。今日は学校で当近さんと気まずくなってしまったけれど、この海老ドリアで帳消しだ。
「美衣佐あのな」、「お兄ちゃんあのね」とわたしとお兄ちゃんの言葉が重なった。
「あ、美衣佐なんだ? 先に言っていいよ」
お兄ちゃんは優しくて先を譲ってくれる。
「わたしね楽しいことを思いついたんだよ」
満面の笑みを浮かべるわたしの顔をお兄ちゃんはじっと見ている。
「ん? 楽しいことって何かな?」
「わたしの誕生日なんだけどね」
「何か欲しいものでもあるのかな? バイト代で買えるものだったら大丈夫だよ」
「あはは、プレゼントも欲しいけど誕生日パーティーをこのカフェでやってほしいなって思ったんだよ」
わたしはニコニコと笑い「ねっ、いいでしょ?」と聞いた。
「うん、大騒ぎしなければいいよ。一応美間さんに確認してみるね」
「ありがとう、お兄ちゃん大好きだよ~」
「あはは、大袈裟な奴だな」
お兄ちゃんは包み込むような笑みを浮かべた。
「うふふ、それでね、当近さんもクリスマスが誕生日なんだ、誘ってOKしてくれたら合同誕生日会にしたいな」
わたしは熱々の海老ドリアを食べ終え最高の誕生日パーティーにするんだからねとほくそ笑む。
まだ、少し先だけど誕生日の十二月二十五日が楽しみだ。
二階に辿り着くとわたしは木製の扉の前で深呼吸をする。当近さんとお兄ちゃんはこのカフェで何を話していたのだろうか。ちょっと気になる。
わたしは、木製の扉を開けた。ドアベルががカランカランと鳴る。
「いらっしゃいませ~」と美間さんの明るい声が聞こえてきた。
店内は今日も木の温もりを感じるゆったりした空間になっていた。お客さんは年齢も性別も様々でけっこういた。
「あら、美衣佐ちゃんじゃない。こんばんは」
「美間さんこんばんは」
わたしは、店内のカウンター席に目を向けたのとほぼ同時にお兄ちゃんが振り向いた。
「あ、美衣佐」とびっくりしたように目を丸くした。
「お兄ちゃん今日はお客さんとして来たんだね?」
わたしは、お兄ちゃんの左隣のカウンター席に腰を下ろす。きっと、さっきまで当近さんが座っていた席だ。
「うん、そうだよ」
「ふ~ん、そうなんだね」
「美衣佐ちゃんお冷やとメニュー表をどうぞ」
美間さんがやって来てわたしの目の前にお冷やとメニュー表を置きパタパタと厨房へ戻った。
「お兄ちゃんもいるから海老ドリアでも食べようかな。どうせお母さんは帰り遅いだろうしね。お兄ちゃんも海老ドリア食べない?」
わたしは開いたメニュー表の海老ドリアを指差し言った。
「あ、海老ドリアか……それさっき食べたから違うメニューにするよ」
「え! お兄ちゃん海老ドリア食べたの? それって当近さんとかな?」
「うん、そうだよ。って美衣佐どうして当近さんが来てたって知っているんだ?」
「お兄ちゃんってばどうしてそんなに驚いているのかな? 今、そこの階段で当近さんとすれ違ったんだよ」
わたしは口元に手を当ててクスクス笑った。
「そっか、そうなんだね」
お兄ちゃんのその目はちょっと泳いでいるように見えた。けれど気のせいかな。それより、
「ねえ、お兄ちゃん海老ドリアはわたしとだけ食べるって決めてなかった?」わたしは頬をぷくっと膨らませ言った。
「え? そんなこと言ったかな?」
「言ったよ。大好きな海老ドリアはわたしとお兄ちゃんの特別メニューにしようねって」
「そうだったか。美衣佐ごめんね」
わたしはお兄ちゃんが謝ってくれたので許した。わたしは海老ドリアを注文して、お兄ちゃんはナポリタンパスタだ。
きっと、当近さんとも笑顔で食事をしたはずだけど、お兄ちゃんとこのニコニコカフェで食事をする時間はとても幸せだった。
海老ドリアの海老はぷりぷりしていて美味しくて濃厚なホワイトソースもチーズも最高だった。今日は学校で当近さんと気まずくなってしまったけれど、この海老ドリアで帳消しだ。
「美衣佐あのな」、「お兄ちゃんあのね」とわたしとお兄ちゃんの言葉が重なった。
「あ、美衣佐なんだ? 先に言っていいよ」
お兄ちゃんは優しくて先を譲ってくれる。
「わたしね楽しいことを思いついたんだよ」
満面の笑みを浮かべるわたしの顔をお兄ちゃんはじっと見ている。
「ん? 楽しいことって何かな?」
「わたしの誕生日なんだけどね」
「何か欲しいものでもあるのかな? バイト代で買えるものだったら大丈夫だよ」
「あはは、プレゼントも欲しいけど誕生日パーティーをこのカフェでやってほしいなって思ったんだよ」
わたしはニコニコと笑い「ねっ、いいでしょ?」と聞いた。
「うん、大騒ぎしなければいいよ。一応美間さんに確認してみるね」
「ありがとう、お兄ちゃん大好きだよ~」
「あはは、大袈裟な奴だな」
お兄ちゃんは包み込むような笑みを浮かべた。
「うふふ、それでね、当近さんもクリスマスが誕生日なんだ、誘ってOKしてくれたら合同誕生日会にしたいな」
わたしは熱々の海老ドリアを食べ終え最高の誕生日パーティーにするんだからねとほくそ笑む。
まだ、少し先だけど誕生日の十二月二十五日が楽しみだ。
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