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美衣佐の家
再び美衣佐Side
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日記帳を閉じたわたしは、お兄ちゃんの部屋へ向かう。襖に手をかけ開けたわたしは部屋の中へ足を踏み入れた。
お兄ちゃんの部屋はいつもきちんと片付けられていて、女の子のわたしより整理整頓が出来ている。
本棚、子供の頃から使っている学習机にベッドだけがあるシンプルな部屋だ。
お兄ちゃんの匂いを感じわたしは鼻から息を吸い込む。そして、わたしはベッドに腰を下ろし部屋の中を見回す。
本棚の中にはぎっしり小説や漫画が詰められ本棚の上にはフィギュア、それからわたしがバイトをして誕生日にプレゼントしたクマのぬいぐるみと猫のぬいぐるみが飾られている。
わたしは、幸せであるけれど、やっぱり不幸だ。世界中の誰よりも不幸ではないのかもしれないけれど……。それでも不幸だ。
幸せになりたい。幸せになりたいよ。
当近さんが羨ましい。そして……。
その時、襖が開きお兄ちゃんが部屋の中に入ってきた。
「おい、美衣佐、どうして俺の部屋に居るんだよ。いつも勝手に入るなよと言っているじゃないか」
お兄ちゃんはベッドに腰かけるわたしの顔をじっと見て言った。
「お兄ちゃん~おかえりなさい!」
わたしはベッドから立ち上がり満面の笑みを浮かべお兄ちゃんに飛びつき首に手を回す。うふふ、怒っているお兄ちゃんの顔も中々美形ではないか。
「あのな美衣佐……俺は怒っているんだよ」
「うふふ、わたし気にしないもん」
「まったく困った奴だよな。美衣佐ももう十五歳なんだぞ。いつまでもお兄ちゃんにくっつくのもどうかなと思うよ」
お兄ちゃんは呆れたような声を出すけれど、わたしは気にしない。
「いいでしょう。これは妹の特権だもんね~だ」
わたしは犬のようにお兄ちゃんの首に手を回し笑う。これは果たして心からの微笑みなのだろかと自問する。
「……美衣佐は仕方ない奴だな」
お兄ちゃんはクスッと笑った。
「ねえ、お兄ちゃんわたしの誕生日十二月二十五日だよ。覚えている?」
わたしは上目遣いでお兄ちゃんを見上げながら言った。
「ああ、もちろん覚えているよ。だって、美衣佐はクリスマス生まれだもんな。忘れるわけないよ。何か欲しいものでもあるのかい?」
お兄ちゃんはわたしを見下ろし尋ねる。
わたしはちょっと考えてから「欲しいものもあるけどお兄ちゃんがずっとわたしの傍にいてくれたらいいな」と答えた。
「ずっとって……プレゼントなら今年も買えるよ。アルバイトしているからね」
お兄ちゃんは困ったように笑った。
わたしは別にお兄ちゃんを困らせたいわけではない。ただ、いつまでもわたしだけのお兄ちゃんでいてほしい。ただそれだけなのだ。
「わ~い、プレゼント買ってくれるんだね」
これ以上お兄ちゃんを困らせても仕方がないので、わたしは無邪気な妹を演じ笑ってみせた。
お兄ちゃんはほっとしたように笑い、「もちろんだよ。それで美衣佐は何が欲しいのかな?」と言った。
「う~ん、そうだね。欲しいものね」
わたしはお兄ちゃんから体を離し顎に人差し指を当てて考える。
「ゆっくり考えていいからね。あまり高いものは無理だけどさ」
お兄ちゃんはそう言ってわたしの頭に手を乗せぽんぽんとした。いつまでも子供扱いなんだから。でも、頭をぽんぽんされてちょっと嬉しかったのも事実だ。
「じゃあ、ゆっくり考えるね」
わたしはとびっきりの微笑みを浮かべた。
日記帳を閉じたわたしは、お兄ちゃんの部屋へ向かう。襖に手をかけ開けたわたしは部屋の中へ足を踏み入れた。
お兄ちゃんの部屋はいつもきちんと片付けられていて、女の子のわたしより整理整頓が出来ている。
本棚、子供の頃から使っている学習机にベッドだけがあるシンプルな部屋だ。
お兄ちゃんの匂いを感じわたしは鼻から息を吸い込む。そして、わたしはベッドに腰を下ろし部屋の中を見回す。
本棚の中にはぎっしり小説や漫画が詰められ本棚の上にはフィギュア、それからわたしがバイトをして誕生日にプレゼントしたクマのぬいぐるみと猫のぬいぐるみが飾られている。
わたしは、幸せであるけれど、やっぱり不幸だ。世界中の誰よりも不幸ではないのかもしれないけれど……。それでも不幸だ。
幸せになりたい。幸せになりたいよ。
当近さんが羨ましい。そして……。
その時、襖が開きお兄ちゃんが部屋の中に入ってきた。
「おい、美衣佐、どうして俺の部屋に居るんだよ。いつも勝手に入るなよと言っているじゃないか」
お兄ちゃんはベッドに腰かけるわたしの顔をじっと見て言った。
「お兄ちゃん~おかえりなさい!」
わたしはベッドから立ち上がり満面の笑みを浮かべお兄ちゃんに飛びつき首に手を回す。うふふ、怒っているお兄ちゃんの顔も中々美形ではないか。
「あのな美衣佐……俺は怒っているんだよ」
「うふふ、わたし気にしないもん」
「まったく困った奴だよな。美衣佐ももう十五歳なんだぞ。いつまでもお兄ちゃんにくっつくのもどうかなと思うよ」
お兄ちゃんは呆れたような声を出すけれど、わたしは気にしない。
「いいでしょう。これは妹の特権だもんね~だ」
わたしは犬のようにお兄ちゃんの首に手を回し笑う。これは果たして心からの微笑みなのだろかと自問する。
「……美衣佐は仕方ない奴だな」
お兄ちゃんはクスッと笑った。
「ねえ、お兄ちゃんわたしの誕生日十二月二十五日だよ。覚えている?」
わたしは上目遣いでお兄ちゃんを見上げながら言った。
「ああ、もちろん覚えているよ。だって、美衣佐はクリスマス生まれだもんな。忘れるわけないよ。何か欲しいものでもあるのかい?」
お兄ちゃんはわたしを見下ろし尋ねる。
わたしはちょっと考えてから「欲しいものもあるけどお兄ちゃんがずっとわたしの傍にいてくれたらいいな」と答えた。
「ずっとって……プレゼントなら今年も買えるよ。アルバイトしているからね」
お兄ちゃんは困ったように笑った。
わたしは別にお兄ちゃんを困らせたいわけではない。ただ、いつまでもわたしだけのお兄ちゃんでいてほしい。ただそれだけなのだ。
「わ~い、プレゼント買ってくれるんだね」
これ以上お兄ちゃんを困らせても仕方がないので、わたしは無邪気な妹を演じ笑ってみせた。
お兄ちゃんはほっとしたように笑い、「もちろんだよ。それで美衣佐は何が欲しいのかな?」と言った。
「う~ん、そうだね。欲しいものね」
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「ゆっくり考えていいからね。あまり高いものは無理だけどさ」
お兄ちゃんはそう言ってわたしの頭に手を乗せぽんぽんとした。いつまでも子供扱いなんだから。でも、頭をぽんぽんされてちょっと嬉しかったのも事実だ。
「じゃあ、ゆっくり考えるね」
わたしはとびっきりの微笑みを浮かべた。
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