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日本から異世界へ

ゴリーラと家族

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「おい、ゴリーラ、俺は君のお母さんではないぞ」

 先生は机に伏せていびきをかき寝るゴリーラの肩をぽんぽんと叩きながら言った。だがしかし、ゴリーラはむにゃむにゃゴリゴリグォーグォーといびきをかき寝ていて起きない。

「お父さん、鬼ごっこをしようよゴリゴリ」

「ゴリーラ、俺は君のお父さんでもないぞ」

 先生はもう一度ゴリーラの肩をぽんぽんと叩くが起きる気配がない。

「仕方ない奴だな。じゃあ、少しだけ寝かせてやるよ」

 ちょっと呆れた声を出した先生は俺の机の前にやって来たかと思うと、「ナオート君、しっかりゴリーラを教育するんだぞ」と言って俺の肩に手を置く。

「はぁ、わかりました……」  

 と、答えたもののゴリーラを教育するなんてとてもじゃないけれれど難しいと思う。

 俺は視線を目の前で呑気ないびきをかいているゴリーラに向けふーっと溜め息をつく。それと同時にゴリーラは家族や仲間と離れ離れなんだよな……。

 俺は両親と一緒にこのもふもふモラーに召喚されたけれど……。ゴリーラはたった一人(一匹)で別世界にやって来たんだもんな。今更ながらゴリーラは地球の仲間に会いたいと思わないのかなと思った。

 もっと優しくしてやらないとな。なあ、ゴリーラはいつもブサカワな微笑みを浮かべているけれど幸せなんだよね? 俺はいびきをかくゴリーラの後ろ姿に向かって問いかけた。
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