異世界に召喚された俺はなぜだかゴリラに懐かれました。俺がもふもふしたいのはゴリラじゃない猫だよ（俺って最強なの？）

日本から異世界へ

ゴリラ天国

「ナオート待っていたよ」

　もふもふふさふさごわごわしているブサカワなゴリラが満面の笑みを浮かべ両手を大きく横に広げている。

　そうなのだ、ここはゴリラカフェなのだ。店員全員ゴリラなんだからむさくるしい。

　これが全員猫だったらどれだけ可愛らしくて癒やされたかなと考える。愛くるしい猫が紅茶やコーヒーを運び「ナオートお茶を淹れたにゃん」なんて言ってくれたらもう幸せでたまらない。

　そんな妄想をしていると、俺の頬はふにゃふにゃふにゃりと緩むのだ。けれど……。

「ナオートお待たせしました～」

　裾にレースが贅沢につけられた白地のエプロン姿のゴリラが俺の目の前にふわーりと湯気の立った紅茶が注がれたティーカップを置いたのだ。

　悲しいかなこれが現実なのだ。

「クッキーもオマケだよ」
「ありがとう……」

　見ると、ビスケットを盛った小皿が置かれていた。

　まあ、俺は紅茶とビスケットが好きだから有り難くいただこうとしよう。

「ナオートゆっくり寛いでね」
「あ、うん……」

　寛ぎたいのはやまやまだけどゴリラの店員が何人（何匹かな）も居て見たくもないのにそのゴリラに目が行く。

「では、ごゆっくりどうぞ～」

　ゴリラはニコニコと笑い厨房に戻る。

　俺は湯気の立つ紅茶が注がれたティーカップを手に取り一口飲んだ。すると、じわりと体がほんのりと温まる。

　ゴリラばかりでむさくるしいけれど、この紅茶を飲むと心が落ち着く。ビスケットもはちみつと小麦粉だけで作られたシンプルなものだ。それにかなり堅いけれど素朴な味わいが俺のお気に入りだ。