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大切な思い出と幸せに気がついた

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  お母さんの笑顔と美味しいお好み焼きとちらし寿司にほくほく顔になっていると、

「佐波の大好きケーキを買ってきたぞ」と言いながらお父さんが帰ってきた。

「わ~い、ケーキ嬉しいな」

  ケーキの箱を見たわたしの目はキラキラと輝いた。ケーキが食べられると思うと嬉しくなったのと同時にいつも忙しいお父さんとお母さんが揃っていることが何よりも嬉しかったのだ。

  自分でも子供みたいだなと思うのだけど、わたしは、お父さんとお母さんの娘なのだからたまには甘えてもいいかなと思う。

  わたしがニコニコと微笑みを浮かべているとお父さんが、

「ほらほら、佐波の大好きなチーズケーキだぞ~」

  なんて言いながらわたしの目の前に置いたチーズケーキを載せたそのお皿はクリスマスのサンタクロースをモチーフにデザインされたお皿だった。

「……お父さん、今、クリスマスじゃないよ。春だよ」

  わたしは、クスクスと笑いながら言った。

「あはは、そうだったな。佐波が好きなお皿を適当に選んでしまったよ。俺としたことが……」

  お父さんは頭をぽりぽりと掻いた。そんなお父さんの姿がなんだか可愛らしく見える。


「ううん、時期外れだけどとても嬉しいよ」

「そうか、だったら良かったよ」

「うん、わたしこのサンタクロースのお皿子供の頃からお気に入りだったんだ」

  わたしは、チーズケーキからはみ出たサンタクロースの真っ赤な帽子を眺めうふふと笑った。

  お父さんもお母さんも仕事で忙しくておばあちゃんと二人でご飯を食べていたけれど、クリスマスはお父さんとお母さんも家にいることが多かったことを思い出した。

  きっと、仕事を早く切り上げてくれていたんだろうな。そんなことに今更ながら気がついた。

  わたしは、愛されていたんだ。そう思うと頬が緩みそして、嬉しくて泣きそうになった。
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