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第六章 真理子

9 可愛らしい茶和ちゃん

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「真理子ちゃん、真理子ちゃん」

   誰かがわたしの名前を呼んでいる。

  わたしは、本の世界にどっぷりはまっていた。気がつくとページを次から次へと捲り次の展開を期待して胸を躍らせていたというのに誰よ?  わたしの邪魔をする人は。

  ページを捲る手が止まらないほど面白くてラスト近くまで読んでいたというのにだ。

「真理子ちゃん、ねえ、真理子ちゃんってば~」 

「もう、うるさいね。誰よ?」

  わたしは、本を脇に置き声がする方向に視線を向けた。すると、そこには。

  茶和ちゃんがいた。

「真理子ちゃん、再びこんばんはですにゃん」

  茶和ちゃんは口角を上げてにっこりと笑っていた。

「……茶和ちゃんそんな所でどうしたの?」

  茶和ちゃんは木製の窓枠の上ににゃーんと立っているではないか。まるで猫の置物のように見える。一体いつからいたのだろうか?

「真理子ちゃんに会いたくなって来ましたにゃん」

「わたしに?」

「はいにゃん。真理子ちゃんにですにゃん」

  茶和ちゃんの笑顔は可愛くてまるで本の世界からにゃーんと飛び出してきたようなそんな感じがする。だって、そうでしょう?  普通に考えると猫は喋ったりなんてしないのだから。


  「真理子ちゃん、どうかしましたかにゃん?」

  わたしがぼんやり考えていると目の前に茶和ちゃんがいた。わたしをじーっと見つめる茶和ちゃんの黄色い目はキラキラと輝いている。

「あ、ううん。何でもないよ」

「そうですかにゃん。真理子ちゃんはころころ表情が変わって面白いね」

「そうかな?」

「はい、見ていて飽きないですにゃん」

  猫の茶和ちゃんに面白いと笑われているわたしって何だろうと思うとなんだか可笑しくなって笑ってしまった。

「茶和ちゃんって不思議な猫ちゃんだね。おしゃべりをする猫のぬいるぐみみたいだね」

  わたしは、茶和ちゃんの可愛らしい頭にそっと触れた。ふさふさで柔らかくて気持ちよくて太陽の匂いがした。猫っていいなそう思いながら茶和ちゃんをむぎゅぎゅと抱き締めた。

「真理子ちゃん、苦しいですにゃん」

「あ、茶和ちゃんごめんね」

  わたしは謝りながらもう一度茶和ちゃんをむぎゅぎゅむぎゅぎゅーと抱き締めた。

「にゃ~ん、ちょっと真理子ちゃんだから苦しいですにゃ~ん」

  茶和ちゃんはジタバタ暴れるけれど知らないよ。可愛らしいから離してあげないよ。
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