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わたしは結婚しません

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「わ、わたしは会いたくなかったです。それにわたしはあなたと結婚なんてしません!」

  わたしは、大きな声ではっきりと言った。

「……サーリーさん、そんな……それってあんまりじゃないですか」

  ルーベスタさんは泣き出しそうな声で言った。だけど、はっきり言わなくてはならない。

「わたしはサーリーではありません。日本人の砂織です。それにあなたのことは好きではありません」

「サーリーさん、なんてことを言うんですか。あなたは僕と今日結婚するんですよ」

  ルーベスタさんの目は悲しみと怒りが入り混じったそんな目だ。

「ごめんなさい。ルーベスタさん」

「サーリーさん、これは決められた運命なんですよ」

「そ、そんな運命なんていらないです。わたしは自分らしく生きます」

  だって、わたしが好きなのは道也君でありマルコーリさんなのだから。

「サーリーさん。運命は決まっていますよ。それに、このオンボロなカフェはサーリーさんに似合いません!」

  ルーベスタさんは鼻息を荒くして言った。

  この人は、このルーベスタさんは人としても尊敬できない。

「わたしは、このカフェが大好きです」

「サーリーさん目を覚ましてください。あなたには豪華絢爛なお城が似合っていますよ」

  ルーベスタさんは自分が正しいと自信ありげな表情で笑った。

  「ルーベスタさん、失礼じゃないですか? 
 このカフェがオンボロだなんて!  それにサオリさんの気持ちも考えたらどうなんですか?」

    それまで黙っていたユーアーナが怒りをむき出しにして言った。

「あなたには関係ないことですよ。これは、僕とサーリーさんの問題なんですからね」

「そうかもしれないですけど、このカフェをオンボロなんて言って許せません。それにサオリさんは、わたしの友達ですから」

「ユーアーナさん、ありがとうございます」

  わたしはユーアーナのことを勘違いしていたのかもしれない。こんなわたしのことを友達と言ってくれるなんて嬉しくて涙が出そうになる。

「ユーアーナの言う通りですよ。ルーベスタさん。砂織の気持ちもちゃんと考えてあげてください」

  マルコーリさんも力強い声で言った。

「そうだよにゃん。だから、わたしも砂織ちゃんの力になりたくて重たい砂織ちゃんを乗せて空まで飛んだんですからにゃん!」

  シロリンちゃんも力強い声で言ってくれた。

  「……確かに僕はサーリーさんの気持ちを考えていなかったかもしれないけれど、サーリーさんもちゃんと意思表示をされなかったですよね」

  ルーベスタさんはそう言って寂しそうな表情を見せた。

「……それはそうかもしれないですね」

  確かにルーベスタさんの言うようにちゃんと話をしていなかった。わたしは突然サーリーになってしまって逃げることしか考えていなかった。

  ルーベスタさんにとってはそんなことは関係ないことだよね。そうかもしれないけれどわたしは……。

「サーリーさん僕はあなたと結婚したいです」

  ルーベスタさんはわたしの顔を真っ直ぐ見て言った。

「……ルーベスタさん、ごめんなさい。わたし、結婚できません」

  わたしは、ルーベスタさんの顔を見てそれから頭を深く下げた。

「どうしてですか?  お金なら沢山ありますよ」

「幸せはお金だけじゃないです」

「もちろん分かっていますよ」

「本当に分かっているんですか?」

「はい、僕はサーリーさんのその美しさにも惹かれました」

  ルーベスタさんは胸を張って言った。

  わたしは、やっぱりこの人は分かっていないなと思った。

「ルーベスタさんは何も分かっていませんね」

「サーリーさんどうしてそんなことを言うんですか?」

  ルーベスタさんは不思議そうに首を傾げた。

「では聞きますけど、わたしがブロンドヘアの美人ではなくて黒髪の日本人女性だったらどうしますか?」

  わたしは、ルーベスタさんの顔を真っ直ぐ見て聞いた。
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