74 / 87
オレンジ色の世界と恐怖
早く帰りたい
しおりを挟む朝になった。この日は晴れていた。わたしは嬉しい気持ちでリビングに向かう。美奈と顔を合わすのが気が重いけれど。
わたしがリビングに入ると、美奈がキッチンからお盆にお茶を載せリビングに入ってきた。
テーブルには、卵焼き、納豆、ひじき、ご飯、アジフライにお味噌汁が並べられいる。
「亜沙美ちゃん、おはよう~」と美奈は昨日のことなんて忘れたみたいにとびっきりの笑顔を浮かべた
「美奈ちゃん、おはよう」
わたしはぎこちない笑みを浮かべ挨拶を返した。
「今日は良い天気になったね。真下さんが朝食を持ってきてくれたんだよ」
「うん、良い天気になったね。優しいオーナーさんで良かった」
みんながリビングに揃うと「さあ、食べよう」と美奈が言って朝食の時間が始まった。
朝食は美味しかったし美奈もいつもと変わらない笑顔を浮かべ和やかに過ごすことができた。多香子も佐和も何事もなかったように朝食を食べていた。
食事を終えると、部屋に戻りボストンバッグに荷物を詰め帰る準備をした。やっと帰れると思うとほっとしたのと同時になんだか胸にモヤモヤするものが残っているように感じた。
荷物の整理が終わりリビングに行くと、美奈が「夕方までゆっくり自然の中を歩いて過ごそうね」と満面の笑みを浮かべて言った。
早く帰りたいけれど仕方がないと思いわたしは頷いた。
「一日延びたけど楽しい同窓会になったよね。みんなが集まってくれてわたしは嬉しかったよ」
美奈がみんなの前でとびっきりの笑顔を浮かべそれから頭をぺこりと下げた。ツインテールが揺れなんだか可愛らしかった。
「こちらこそ楽しかったよ」みんなは一斉に拍手をした。
「えへへ、みんなありがとうね。あ、でもまだ終わっていないよ。これから自然の中を散歩するんだからね」
美奈は腰に両手を当ててニンマリと笑った。
わたしもそんな美奈の姿を見ていると微笑ましい気持ちになったけれど、やはりあのオレンジ色の提灯キーホルダーのことはそのままなかったことに出来ないなと思った。
それと、オレンジ色の提灯キーホルダーは美奈が持っているのだろうかとふと思った。
美奈はキラキラ輝く笑顔の裏で何を思っているのだろうか。その笑顔と同じ気持ちだったら良いのだけど、なんだか違うような気がするのだ。
ねえ、どんな気持ちでいるのと、心の中でわたしが語りかけていると美奈と目が合った。その目はガラス玉のような透き通った綺麗な大きな目なんだけれど、何を考えているのか読み取れないそんな目だった。
美奈の気持ちを知りたいような知りたくないような複雑な気持ちになった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
さや荘へようこそ!(あなたの罪は何?)
なかじまあゆこ
ホラー
森口さやがオーナーのさや荘へようこそ!さや荘に住むと恐怖のどん底に突き落とされるかもしれない!
森口さやは微笑みを浮かべた。 上下黒色のスカートスーツに身を包みそして、真っ白なエプロンをつけた。 それからトレードマークの赤リップをたっぷり唇に塗ることも忘れない。うふふ、美しい森口さやの完成だ。 さやカフェで美味しいコーヒーや紅茶にそれからパンケーキなどを準備してお待ちしていますよ。 さやカフェに来店したお客様はさや荘に住みたくなる。だがさや荘では恐怖が待っているかもしれないのだ。さや荘に入居する者達に恐怖の影が忍び寄る。 一章から繋がってる主人公が変わる連作ですが最後で結末が分かる内容になっています。
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
死後婚
風見星治
ホラー
"彼"の田舎には冥婚(その地方では死後婚と呼ばれる)という文化がある。冥婚とは、生者と死者の間で婚姻関係を結ぶ儀式のこと。しかし"彼"が生まれた田舎町では他のどの冥婚とも違う、「死者と同じ家で一夜を共にする」という独特のルールがあるそうだ。オカルト雑誌のルポライターである"俺"は、久方ぶりに実施された死後婚を身をもって経験した"彼"に接触、その話を聞き出す事に成功した。
※他小説投稿サイトにも同内容を投稿しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし
響ぴあの
ホラー
【1分読書】
意味が分かるとこわいおとぎ話。
意外な事実や知らなかった裏話。
浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。
どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる