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オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしは

やり直したい

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  わたしは就職はしないで派遣社員になった。それはやりたい仕事が見つからなかったからだ。いい加減な気持ちで社員になりたくなかったしそれよりも好きな小説を書きたいなと思った。

  しかしこれで良かったのかは分からない。人生はいつも選択の連続だ。どこかでその選択を間違えると大変なことになる。

  そう大変なことに……。

  あの時にもう一度戻ってやり直したいなと思うこともある。だけど、やり直して選んだその選択も正しいのかは分からない。

  今、わたしが生きているこの瞬間を大切にしたいなと思うしそれが大事なことのはずだ。選ばなかった道のことをクヨクヨと考えても仕方がない。疲れるだけだ。

  だけど、あの夏祭りの日はだけはやり直せたらなと思う。

  わたしは、『オレンジ色の夕日とわたしの青春』をぺらぺらとめくりながらあの夏祭りの日と今現在のわたしのことを考えた。

  あの夏祭り日は楽しい思い出だったはずなのにあの夏祭りの日だけはやり直せたらなと思うなんてどこか矛盾している。

  そう矛盾していることは分かっているのだけど、真由香の言葉を思い出すとなぜだかそう思えてきたのだ。

わたしは開いた本を眺め「ねえ、わたしは何をやり直したいのかな?」と呟いた。

  だけど、本は何も答えてくれない。

  

  夕方になると雨はすっかり上がっていた。美奈が雨が止んだので夕飯は外に食べに行こうと提案した。みんなそれに賛成し夕飯は外で食べることになった。

「今頃雨が止むなんてね」

  外に出て真由香が雨上がりの空を見上げて言った。

「うん、雨が止んでも電車が動かないなんてね」

「でも亜沙美ちゃん、これはこれでいいじゃない。みんなとたくさん話せる良い機会ができたと思えばさ」

  真由香はそう言って空に向かって伸びをする。

「……うん、そうだね」

  わたしも空を見上げた。雨が汚れたものを洗い流してくれたのか空は綺麗だった。わたしのこのモヤモヤする気持ちも洗い流してくれたらいいのになと思った。

「ねえ、真由香ちゃん」

「うん、何?」

「昼食の後テラスで、真由香ちゃん、わたしの書いた『オレンジ色の夕日とわたしの青春』を読んで懐かしかった、この同窓会でみんなと会ったら改めてあの頃に戻ってやり直したいなと思ったと言ったでしょ」

  わたしは、真由香が何かを覚えているのかなと思って聞いてみた。あの時はオレンジ色の提灯に反応してちゃんと聞けなかったから。

「え?  わたしそんなこと言ったかな?」

  真由香はそう言って首を傾げた。

「言ったよ。わたしあの後『オレンジ色の夕日とわたしの青春』を読んだんだけど盆踊りのやぐらにオレンジ色の提灯が吊るされている描写があって、主人公がそれを懐かしむ思い出が描かれていたんだけど……」

  わたしは一度息を吐き続きを話した。

「真由香ちゃんのやり直したいことはあの高校生三年生の時の夏祭りのことを言っているのかなと思ったんだ」
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