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帰れない
真っ赤なアザミ
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「わたしも思ったよ。あの大きな真っ赤なアザミ、葉には深い切れ込みがあってギザギザとしていて鋭いトゲがあって触るとチクッと痛いかもってね」
そう言った美奈のその目はあの夏祭りの中にいるそんな目だった。
その美奈の目を見るとわたしもあの懐かしい夏祭りの中に惹き込まれそうになった。
佐和の真っ赤なアザミ柄の浴衣、美奈の紫陽花柄の浴衣にそれから風に揺れるツインテール、みんなのキラキラ輝く笑顔、それと、なんだっただろうか?
あの日、何かがあったそんな気がするのだけど、思い出しそうで思い出せない。頭の中にモヤがかかったような感じで大事なことが思い出せないそんな感じだ。
「ふふっ、美奈ちゃんもあの葉のギザギザトゲがあって痛そうだって思ったんだね」
「うん、思ったよ。懐かしい思い出だね」
「美奈ちゃんわたし、このポストカードを見て忘れていたことを思い出したよ」
「……多香子ちゃん思い出したのね」
「うん、思い出したよ」
多香子は美奈の顔を見て頷いた。
この二人は一体何を思い出したというのだろうか。わたしは美奈と多香子の顔を交互に眺めた。
「ねえ、美奈ちゃん、多香子ちゃん何を思い出したのかな?」
わたしがそう問うと二人はわたしの顔をじっと見た。
「亜沙美ちゃんは思い出さないのかな?」
美奈がわたしの目を見てにっこりと笑った。その顔はとても可愛らしかったのだけど、なぜだか違和感があった。
「……思い出すって何を?」
わたしの問いに美奈は「そっか、思い出さないか……」と言って悲しげな表情を浮かべた。
「美奈ちゃん、なんのことか分からないよ」
「ゆっくり思い出してね」
美奈はツインテールの毛先をくるくる指に巻きつけながらわたしの顔を見て微笑みを浮かべた。
その美奈の表情から何を思っているのかわたしは読み取ることができなかった。果たして美奈は今、何を考えているのだろうか。
そして、多香子も「そうそう亜沙美ちゃんゆっくり思い出してね」と言って微笑むのだった。わたしはなんのことかさっぱり分からず首を傾げた。
わたしは、その答えを知りたいけれど知りたくない複雑な気持ちになる。
美奈と多香子はわたしの顔をじっと見ている。そして、わたしから目を逸らし二人は顔を見合わせた。なんだかこの二人は絵になるなと思った。
そう言った美奈のその目はあの夏祭りの中にいるそんな目だった。
その美奈の目を見るとわたしもあの懐かしい夏祭りの中に惹き込まれそうになった。
佐和の真っ赤なアザミ柄の浴衣、美奈の紫陽花柄の浴衣にそれから風に揺れるツインテール、みんなのキラキラ輝く笑顔、それと、なんだっただろうか?
あの日、何かがあったそんな気がするのだけど、思い出しそうで思い出せない。頭の中にモヤがかかったような感じで大事なことが思い出せないそんな感じだ。
「ふふっ、美奈ちゃんもあの葉のギザギザトゲがあって痛そうだって思ったんだね」
「うん、思ったよ。懐かしい思い出だね」
「美奈ちゃんわたし、このポストカードを見て忘れていたことを思い出したよ」
「……多香子ちゃん思い出したのね」
「うん、思い出したよ」
多香子は美奈の顔を見て頷いた。
この二人は一体何を思い出したというのだろうか。わたしは美奈と多香子の顔を交互に眺めた。
「ねえ、美奈ちゃん、多香子ちゃん何を思い出したのかな?」
わたしがそう問うと二人はわたしの顔をじっと見た。
「亜沙美ちゃんは思い出さないのかな?」
美奈がわたしの目を見てにっこりと笑った。その顔はとても可愛らしかったのだけど、なぜだか違和感があった。
「……思い出すって何を?」
わたしの問いに美奈は「そっか、思い出さないか……」と言って悲しげな表情を浮かべた。
「美奈ちゃん、なんのことか分からないよ」
「ゆっくり思い出してね」
美奈はツインテールの毛先をくるくる指に巻きつけながらわたしの顔を見て微笑みを浮かべた。
その美奈の表情から何を思っているのかわたしは読み取ることができなかった。果たして美奈は今、何を考えているのだろうか。
そして、多香子も「そうそう亜沙美ちゃんゆっくり思い出してね」と言って微笑むのだった。わたしはなんのことかさっぱり分からず首を傾げた。
わたしは、その答えを知りたいけれど知りたくない複雑な気持ちになる。
美奈と多香子はわたしの顔をじっと見ている。そして、わたしから目を逸らし二人は顔を見合わせた。なんだかこの二人は絵になるなと思った。
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