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帰れない
やっぱり気になるアザミ柄と佐和
しおりを挟む裏表も何か意味があるのかなと気になるしそれと、テラスでお茶を飲んだ時佐和が言った『提灯キーホルダーなんだけどね』と『わたし……あの」と言って一瞬沈黙したその続きの言葉も気になった。
「佐和ちゃん、昨日話していた……」
「ん? 何?」
不思議そうにわたしの顔をじっと見る佐和に「提灯キーホルダーのことなんだけど……」と訊ねようとしたその時、
「みんな~お昼ごはんだよ~」
美奈の声がリビングから聞こえてきた。
「あ、は~い、今行くよ」と佐和が元気よく返事をした。
佐和にオレンジ色の提灯キーホルダーのことを確認したかったのになとわたしは溜め息をつき薄暗くて長い廊下を歩いた。
「佐和に何か聞きたいことがあったのか?」
わたしの隣を歩く松木が前方を歩く佐和に目をやり聞いてきた。
「うん、オレンジ色の提灯キーホルダーのことなんだけどね」
「また、その話なのか……」
「うん、ちょっと気になることがあったんだもん」
わたしは佐和の後ろ姿を眺めながら返事をした。すると、佐和のワンピース姿がアザミ柄の浴衣と重なって見えた。
わたしはびっくりして目を擦った。
アザミは怖い花だと聞いたことがある。葉には深い切れ込みがありギザギザとしていて鋭いトゲがある。
きっと、触るととても痛いだろう。美しい花なのにトゲがあるだなんてびっくりする。
そんなアザミ柄の浴衣を着ていた佐和のことが少し怖くなった。
佐和は、『みんな裏表があるものね』と言っていたけれど、佐和本人こそ裏表があるのかもしれない。
わたしはアザミの花に吸い込まれそうになった。綺麗なトゲのあるアザミの花に……。
トゲのあるアザミ柄の浴衣が艶やかで大人になった佐和にとても似合っている。綺麗でそして、ちょっと恐ろしい。
「おい、亜沙美、リビングに入らないのか?」
「えっ?」
わたしは気がつくとリビングの扉の前に立っていた。松木はそんなわたしの顔を怪訝そうに見ている。
「亜沙美ちゃんどうしたの?」
佐和もこちらを振り返りわたしの顔を見た。
「……ちょっとぼーっとしてた」
わたしは笑って誤魔化した。まさか、アザミ柄の浴衣姿の佐和が怖く見えたなんて言えない。
「もう、亜沙美ちゃんてば」
佐和は口元に手を当てて笑った。その佐和の笑顔は可愛らしかった。
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