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泊まりがけの同窓会とオレンジ色

オレンジ色の提灯

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「このお店の雰囲気わたし好きだな~店の入口に吊るされていた提灯も丸型で可愛らしかったし、見てみてテーブルに置いてあるこの調味料も爪楊枝入れもなんだかレトロだよ~」

  美奈はそう言って楽しそうに笑った。

「そうだよな。あの入口の提灯いいよな。いらっしゃいませ~って言われてる感じだよな」

  久野君も楽しそうに笑っているのだけど、わたしは店の入口に吊るされている提灯と言う言葉に反応してドキドキしてしまった。

  せっかく美味しい唐揚げを食べて幸せな気持ちになったのに台無しだ。

  オレンジ色の提灯が頭の中に思い浮かんできた。オレンジ色の提灯のことなんて考えるのはよそう。そうだ今はこの美味しい料理を食べることに集中するのだ。

  わたしは自分にそう言い聞かせ顔を上げると松木と目が合った。

  松木が眉間に皺を寄せ心配そうにわたしの顔を見ていた。

「そういえばわたしが買ったポストカードとこの定食屋の提灯が似ているんだよ」

  多香子が箸をお皿に置きながら言った。

「へぇ~この定食屋の提灯とそっくりなポストカードを買ったんだ」

  美奈が興味津々に身を乗り出した。

「うん、これなんだけどね」

  多香子はカバンに手を入れサッとポストカードを取り出しテーブルに置いた。

「わっ!  めちゃくちゃ良い雰囲気が漂っているポストカードだね」

「おっ!  オレンジ色の提灯じゃん」と久野君が言った。

  美奈も久野君もポストカードを興味深げに眺めている。多香子の目の前に座っている佐和はポストカードに興味がないのか何も言わずにアジフライを食べている。

「隣のテーブルはポストカードの話で盛り上がっているけど俺達は別の話をしようぜ。このメンチカツ美味しいぞ」

  松木がわたしの顔を見てそれから真由香と真夜に視線を向けて言った。

「わたしもメンチカツ定食にするか唐揚げ定食にするか迷ったんだよね」

  わたしと同じ唐揚げ定食を選んでいた真由香は唐揚げにお箸を刺し口に運ぶ。

「そうそうわたしもメンチカツ定食か唐揚げ定食で悩んだよ」

  松木は意外と優しいんだなと思いながらわたしも唐揚げを口に放り込み食べた。

「ご飯の話も楽しいけどわたしはポストカードにも興味があるな」と真夜が言う。

  そういえば真夜は自分宛に絵葉書を送ると言っていたではないか。


  せっかく松木が話題を変えてくれたのに結局ポストカードの話になりそうだ。

  だって、真夜が、

「ねえ、多香子ちゃん。ポストカードを買ったんだね。わたしも可愛い猫ちゃんのポストカードを買ったんだよ。自分宛に手紙を送ろうかな~と思って」と言ってニコニコと笑っているのだから。

「真夜ちゃんは自分宛に手紙を送るんだ。あ、わたしも自分宛にオレンジ色の提灯柄のポストカードを送ってみようかな」

  多香子も楽しそうに笑った。

「自分宛に送ると同窓会旅行の思い出になるし大切な宝物になるかもしれないよ」

「うふふ、そうだね。じゃあ、わたしも自分宛に手紙を送ってみようっと~」

  多香子は歌うような口調で言った。

  真夜も多香子も笑っているけれど、オレンジ色の提灯柄の手紙が自分宛に送られてくるなんて想像しただけで恐ろしくて背筋が凍りつく。

  考えたくもないのにわたしの頭の中にオレンジ色の提灯と血がついた包丁にそれから血だらけの床が思い浮かんでしまった。
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