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過去と未来の大阪でたこ焼き
しおりを挟むわたし達はコインロッカーにボストンバッグを預けた。これで、重たい荷物から解放された。奈央に持たせていたけれど。
「ちょっと待ってね。カフェノートを見るからね」
わたしはカフェノートを開いた。
すると、そこには祐介君の豪快で大きくて綺麗な文字が浮かび上がっていた。
『新大阪駅に着いたよ。俺達は今からお昼にたこ焼きを食べに行くことになりました。新大阪駅近くの『たこ焼きタッコ~ちゃん』に行きます。
早乙女ちゃん達もそのお店がまだ存在していたら良かったら行ってみてくださいね。たこ焼き楽しみだな~。祐介』と書かれていた。
「祐介君達は今から新大阪駅近くのタッコ~ちゃんにたこ焼きを食べに行くんだって。どうする? わたし達も行く?」
「やった~たこ焼きだ。行こうよ」
亜子ちゃんはにんまりと笑った。
「そのお店検索したよ。あったよ。ほら」
奈央はそう言ってスマホの画面をわたし達に見せた。
わたし達は『たこ焼きタッコ~ちゃん』に行くことになった。祐介君が行くたこ焼き屋にわたしも行けるなんてワクワクドキドキする。
そのたこ焼き屋『たこ焼きタッコ~ちゃん』は新大阪駅から歩いて五分くらいの所にあった。
「ここだよ~」とわたしは指差した。
たこ焼き屋タッコ~ちゃんと書かれた赤色の提灯がぶら下がっているたこ焼き屋だった。
「ふふっ、関西旅行初日からわたしのたこ焼きの夢が叶うなんて嬉しいよ」
亜子ちゃんは口元に手を当ててふふっと笑った。
「亜子ちゃんはたこ焼きが食べたいって言っていたもんね」
わたし達旅行研究部同好会のメンバーはたこ焼き屋の中に入った。
店内は四人掛けのテーブル席が四席と二人掛けのテーブル席が二席にカウンター席が八席あった。
もうたこ焼きの良い匂いがふわふわと漂ってきて食べる前から幸せだ。。祐介君も過去の世界でこの美味しそうな匂いを嗅いでいるのかなと思うと不思議な気持ちがしてドキドキしてきた。
祐介君の過去とわたしの現在は繋がっている。
わたし達はカウンター席に並んで座った。店内は持ち帰りのお客さんも並んでいて賑わっていた。
わたしはメニュー表を手に取り眺めた。たこ焼きの種類は豊富だった。たこ焼き、ねぎタコ、カレーマヨネーズ、タコチーズ、もちチーズ、キムチ、こんにゃく等々。
「どれもこれも美味しそうだけどやっぱり王道のたこ焼きにしようかな?」
「だよね、わたしはたこ焼きにするよ」
わたしの左隣に座っている亜子ちゃんがわたしの顔を見て言った。
そして、わたしと亜子ちゃんと久美佐ちゃんはたこ焼きを注文して奈央と青橋君はキムチたこ焼きを注文した。
わたしはたこ焼きが運ばれてくるのをわくわくしながら待った。そして、鞄からカフェノートとボールペンを取り出す。
カフェノートを開くとそこには、祐介君の豪快で大きくて綺麗な文字が浮かび上がっていた。
『今、俺と親達はたこ焼きを食べています。たこ焼きにセルフサービスになっているソースとマヨネーズをたっぷりかけたよ。祐介』と書かれていた。
わたしもペンを走らせ、『わたしは、旅行研究部同好会のメンバーとカウンター席に座りたこ焼きが運ばれて来るのを待っているところです。楽しみだよ~。早乙女』と書いた。
たこ焼きが運ばれて来るのももちろん楽しみではあるけれど、何よりも祐介君も過去の世界でこのたこ焼き屋にいることに奇跡を感じた。
「お待たせしました。たこ焼きです」
店員さんがわたし達の目の前にたこ焼きを並べてくれた。
店員さんがキッチンに戻るとわたし達は「美味しそうだね」と言い合った。
目の前にあるたこ焼きは美味しそうだ。わたしはテーブルに置かれているセルフサービスのソースとマヨネーズを手に取りたこ焼きにたっぷりかけた。
祐介君もこのソースとマヨネーズをかけたんだよね。そう思うと頬が緩む。
「では、いただきま~す」と部長のわたしが言うとみんながそれに続き「いただきま~す」と手を合わせる。
湯気の立っているたこ焼きを二本の竹串をお箸のように持ちたこ焼きを口に運んだ。
すると、アツアツのたこ焼きは外側の生地はふわふわで中はとろーりとろとろしていてとろけそうだ。ふわっとした食感がそれはもう美味しい。
「これは美味しい~」とわたしは声に出して言った。
「早乙女ちゃんめちゃくちゃ美味しいね」
亜子ちゃんもとびっきりの笑顔を浮かべている。
「関西のたこ焼きは外側もふわふわだね」
「東京のたこ焼きは外側はカリッとしてるもんね」
亜子ちゃんがたこ焼きをはふはふしながら食べた。
「美味しいね。本場大阪のたこ焼きは外もふわふわと柔らかいらしいね」
わたしの右隣の席に座っている奈央がそう言いながらたこ焼きを美味しそうに食べた。
「そうらしいよね。元々たこ焼きは外側もふわふわらしいね」
わたしもたこ焼きをはふはふしながら食べた。もう柔らかくてとろ~りとろとろで美味しくてたまらない。
今日食べたたこ焼きはこの先の人生で忘れないだろう。
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