上 下
42 / 75

過去の日の

しおりを挟む
「それは何だよ?  めちゃくちゃ気になるよ」

「えっと、なんて言えばいいのかな?  あ、でも、奈央には関係ないことだから気にしないでよ」

  わたしは、奈央に祐介君のことを正直に話して良いものか判断できなくてそう答えたのだけど。

「旅行研究部同好会で関西に旅行に行こうとしているんだから関係あるよね?」

  奈央はそう言ってわたしの顔を真っ直ぐ見て言った。

  どうしたら良いものかわたし早乙女は大ピンチなのだ。わたしは、アイスティーをジュルジュル飲み心を落ち着かせた。

  いやいやこれは落ち着かない。だって、奈央がじっとわたしの顔を見ているのだから。

  わたしはその視線に堪えかねて、

「祐介君は過去の時代の高校三年生なんだもん!」と思わず叫んでしまった。

「か、過去の時代の祐介君……」と言って奈央は目を剥き口を金魚のようにパクパクさせている。

  わたしは、なんて答えたらいいのか分からなくて黙ってしまった。しばらくの間奈央は目を剥き口をパクパクさせ、わたしは壁の染みをじっと眺めていた。

「……姉ちゃん冗談を言っているの?」

  先に口を開いたのは奈央だった。

「じ、冗談じゃないよ。本当のことだもん」

「へぇ~冗談じゃないんだね。そのノートの祐介君は過去の時代の高校三年生なんだ? 
 ちょっと意味が分からないよ。姉ちゃん説明してよ」

  奈央はそう言って鼻でふふんと笑った。

  なんだか偉そうな態度なのでわたしはムッとした。奈央の奴は憎たらしくて生意気な態度ではないか。

「このノートの祐介君は西暦二千年当時高校三年生だったんだよ」

  わたしはおもいきって本当のことを言った。

「ね、ね、姉ちゃん、頭がおかしくなったの?  まあ元々おかしいけれど」

  奈央のその顔は半笑い顔になっている。きっと、びっくりしているのかなと思う。

  まあ、わたしが逆の立場であれば同じ表情になっているのかもしれないけれど。


「このノートは西暦二千年と現在の西暦二千二十二年が繋がっているんだよ」

  わたしは、カフェノートを鞄から取り出しテーブルに置いた。

「西暦二千年と西暦二千二十二年繋がっているってマジかよ」

 テーブルの上に置いたカフェノートを奈央は食い入るように眺めている。

「うん、嘘みたいだけど本当のことなんだよ」

「……信じられないけど表紙に2000年と書いてあるね。ただの過去のノートじゃなくて本当に現在と繋がっているの?」

「うん、そうなんだよ」

  わたしは答えながらここまで話してしまったのでノートの中身を本当は見せたくはないけれど見せるしかないかなと考えた。

  それに亜子ちゃんにも見せてしまったことではあるし。

  首を傾げながらカフェノートの表紙をじっと見つめ続けている奈央にわたしは、「ノートの中身を見る?」と聞いた。

  奈央は顔を上げわたしの顔を見た奈央の表情は大きく目を見開いていた。

「読んでもいいの?」

「うん、仕方ないから読ませてあげるよ」

  わたしは奈央にカフェノートを渡した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

悪意か、善意か、破滅か

野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。 婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、 悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。 その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。

顔と名前を覚えることが苦手な私が出会ったお爺さんは、私とよく似た人を忘れられなかったようです

珠宮さくら
青春
三千華は結婚して家庭を持ってから、思い出深い季節が訪れて大学生の頃のことを思い出すことになった。 家族以外の人の顔と名前を覚えることが苦手な三千華は、そこで自分の顔にそっくりな女性と間違い続けるお爺さんとボランティアを通じて出会うことになるのだが、その縁がより自分に縁深いことを知ることになるとは思ってもみなかった。

シングルマザーになったら執着されています。

金柑乃実
恋愛
佐山咲良はアメリカで勉強する日本人。 同じ大学で学ぶ2歳上の先輩、神川拓海に出会い、恋に落ちる。 初めての大好きな人に、芽生えた大切な命。 幸せに浸る彼女の元に現れたのは、神川拓海の母親だった。 彼女の言葉により、咲良は大好きな人のもとを去ることを決意する。 新たに出会う人々と愛娘に支えられ、彼女は成長していく。 しかし彼は、諦めてはいなかった。

クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします! 6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします! 間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。 グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。 グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。 書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。 一例 チーム『スペクター』       ↓    チーム『マサムネ』 ※イラスト頂きました。夕凪様より。 http://15452.mitemin.net/i192768/

処理中です...