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カフェノートで二十二年前の君と

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  今日もわたしは木の温もりを感じる喫茶店の二階のカウンター席でアイスティーを飲みながらぼんやり道を行き交う人を眺めている。

  店内はゆったり座れるソファーやテーブル席もあり、ノートパソコンを開いてカタカタと作業をしているスーツ姿のビジネスマンや楽しそうに会話をしている人達や本を読んでいる女性などがいる。

  今日もわたしが座っているテーブルの上に大学ノートが置かれていた。年季が入っていて表紙に小さな文字で『2000年』と書かれているあのノートだ。

  その染みのあるカフェノートがわたしに見てみてと言っているかのように感じられた。

  わたしはノートを手に取りぺらぺらとページをめくった。

『奇跡の瞬間に出会えた祐介さんが羨ましいです。二千四年生まれの早乙女より』とわたしが書いたページに辿り着いたその時、

「えっ?  これは何?」

  わたしは、思わず声を出してしまった。

  だって、わたしが書いた文字の下に……。



  まさか、そんなことがあるのだろうかとわたしは手の甲で何度も目を擦った。

  だけど、何度目を擦ってもわたしが書いた文字の下には『二千四年生まれの早乙女さん、こんにちは祐介です』と書かれているのだった。

  これは誰かの悪戯だろうか。そうだ、悪戯に違いない。だって、西暦二千年の祐介君がこのカフェノートに返事を書くことなんてできるはずがないのだから。

  だけど、ノートに書かれているその文字をよく見てみるとあることに気がついた。

  ボールペンで書かれたその文字は輪郭がぼやけていて薄くなっていた。わたしが書いた文字よりも明らかに時が経過しているように見えるのだった。

「う、嘘でしょ?  まさか……そんなこと有り得ないよ」

  だけど、ノートには……。

『早乙女さんが二千四年生まれと言うのは冗談ですか?  でも、本当に未来の早乙女さんからの手紙だったらロマンを感じますね。祐介』と書かれているのだった。

  わたしは、ペンを執り、『わたし早乙女は二千四年生まれです。それと現在は二千二十二年です。祐介さんがいる世界は西暦二千年なのですか?』と書いた。


  わたしは、カフェノートに書いた自分の文字に目を落とし溜め息をついた。真剣に書いている自分が馬鹿みたいに思えてくる。

  落ち着こうと思いわたしはアイスティーに口をつけた。底に沈んだ輪切りのレモンが少し苦く感じるけれど、口の中にレモンの香りが広がりホッとした。

  それからもう一度ノートに目を落としたわたしの心臓は止まるかと思った。

  だって、ノートに『マジですか!?  早乙女さんのいる世界は西暦二千年なんですか? 
 うわぁ~びっくりだ。これってどういうことなんだ。祐介』

  わたしが先程書いた文字の下に書かれていたのだから。しかもボールペンで書かれたその文字は輪郭がぼやけていて薄くなっている。

  これは、西暦二千年の祐介君からの返事が来たと言うことだよね。わたしはびっくりして口から心臓が飛び出しそうになった。

  
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