377 / 423
第18章:居場所になる
10話
しおりを挟む
「ウチの部員に暴行までしておいて、警察を呼ばれたら慌てふためくだなんて、さすがにあり得ないんじゃない? 自分がやったことには責任を持つのが大人のやる事でしょう?」
「やめ……いっ……」
当然、明日香は関節技については立ったままでも寝ていても使えるよう、一通り覚えている。地面に転がされた素人がどうあがいても解けるような代物ではない。
言い争いをしていた時からそれなりに見物人はいたが、今はさらに見物人も増えてきている。その中には、相撲部のボランティア活動で一緒になった者もいて、何事かと言いたげだ。悪くない、と真由美は思う。こういう時、自分たちが今までこの街でボランティア活動をしていた実績が認められる。この子たちが悪いことをするはずがない、と理解してもらえる……と。
一方、ナツキは結局警察が呼ばれる事態になってしまったことを、どう受け止めればいいかわからない様子であった。もしかしたら、両親がまともになってくれるかもしれないという期待。逆に、両親が『お前のせいだ』と、さらに自分へのあたりを強くする不安。どちらかといえば、不安のほうが強いのだ。
到着した警察、増田 幸弘は、関節を極められた両親を見ながら怪訝な表情をしていたが、周囲の証言から必要以上の暴力はなかったという証言は取れた。だが、真由美に対しては『馬鹿にしてトラブルを増やすのはだめだ』と、釘を刺される。
だが問題は、両親の方だ。ナツキの許可を取って背中の傷を見せてみると、幸弘は顔を青くしている。
「これは……酷いですね。ちょっと、お父さん方! これはどうやってついた傷ですか!? 普通に転んだりしてできる傷じゃあありませんよ!」
「そ、それは……」
両親は言葉に詰まる。彼らにとって、他人からの評価なんかよりも信仰のほうが重要といった感じで、誰になんと思われようと関係ない……のだが、警察だけは怖いようだ。逮捕されてしまえば信仰が中断される。教団への献金もできない。逮捕されて世間の目がどうのこうのとか、自由が奪われるとかそんなことよりも、両親にとってはそちらの方が大事なようだ。
「躾のために……この子、言っても全然聞かない子で……」
「今日だって、修学旅行に行きたいってわがままを言って……」
「修学旅行の何がわがままなんですか? 学校のクラスメイトと思い出を作るいい機会じゃないですか?」
「いや、その……私達、神社やお寺にはいるのは……」
だから、躾という言葉を使いつつも、彼らの言葉遣いは真由美に対してのそれよりも随分しおらしい。
「この人たち、宗教選択の自由という日本国憲法第20条に違反しているんですよ。お寺や神社に行くことになる修学旅行に行くなんて何事だって、こんな背中の傷を負わせたんですよ」
母親が言葉に詰まっている間に真由美は両親の印象を少しでも悪くすることを言う。幸弘には頭が痛そうだ。
「やめ……いっ……」
当然、明日香は関節技については立ったままでも寝ていても使えるよう、一通り覚えている。地面に転がされた素人がどうあがいても解けるような代物ではない。
言い争いをしていた時からそれなりに見物人はいたが、今はさらに見物人も増えてきている。その中には、相撲部のボランティア活動で一緒になった者もいて、何事かと言いたげだ。悪くない、と真由美は思う。こういう時、自分たちが今までこの街でボランティア活動をしていた実績が認められる。この子たちが悪いことをするはずがない、と理解してもらえる……と。
一方、ナツキは結局警察が呼ばれる事態になってしまったことを、どう受け止めればいいかわからない様子であった。もしかしたら、両親がまともになってくれるかもしれないという期待。逆に、両親が『お前のせいだ』と、さらに自分へのあたりを強くする不安。どちらかといえば、不安のほうが強いのだ。
到着した警察、増田 幸弘は、関節を極められた両親を見ながら怪訝な表情をしていたが、周囲の証言から必要以上の暴力はなかったという証言は取れた。だが、真由美に対しては『馬鹿にしてトラブルを増やすのはだめだ』と、釘を刺される。
だが問題は、両親の方だ。ナツキの許可を取って背中の傷を見せてみると、幸弘は顔を青くしている。
「これは……酷いですね。ちょっと、お父さん方! これはどうやってついた傷ですか!? 普通に転んだりしてできる傷じゃあありませんよ!」
「そ、それは……」
両親は言葉に詰まる。彼らにとって、他人からの評価なんかよりも信仰のほうが重要といった感じで、誰になんと思われようと関係ない……のだが、警察だけは怖いようだ。逮捕されてしまえば信仰が中断される。教団への献金もできない。逮捕されて世間の目がどうのこうのとか、自由が奪われるとかそんなことよりも、両親にとってはそちらの方が大事なようだ。
「躾のために……この子、言っても全然聞かない子で……」
「今日だって、修学旅行に行きたいってわがままを言って……」
「修学旅行の何がわがままなんですか? 学校のクラスメイトと思い出を作るいい機会じゃないですか?」
「いや、その……私達、神社やお寺にはいるのは……」
だから、躾という言葉を使いつつも、彼らの言葉遣いは真由美に対してのそれよりも随分しおらしい。
「この人たち、宗教選択の自由という日本国憲法第20条に違反しているんですよ。お寺や神社に行くことになる修学旅行に行くなんて何事だって、こんな背中の傷を負わせたんですよ」
母親が言葉に詰まっている間に真由美は両親の印象を少しでも悪くすることを言う。幸弘には頭が痛そうだ。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
僕たちは拗らせている ~色々と拗らせた彼女たちに貞操を狙われているが、そう簡単に僕の童貞を奪えるとは思わないでほしい~
邑樹 政典
青春
【ちょっとエッチな学園ラブコメディ】
ある日、僕は廊下に落ちていたスケッチブックを拾った。
そこにはなんと、無数の男性器がスケッチされているではないか。
しかも、どうやらこれは学年一の美少女、翠川陽菜の落とし物だったようで……。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
本作はちょっとエッチな要素もあったりなかったりする学園ラブコメディです。
奇妙な落とし物を拾ったところから、急速に『僕』の周りの人間関係が動きはじめます。
はてさて、一癖も二癖もある美少女たちに囲まれて、『僕』の青春はどこへ向かっていくのでしょうか。
本作は良くも悪くも主人公のことが好きな女の子しか出てこないハーレムラブコメディです。
また、直接的な行為の描写はありませんが、エッチな単語やシーンはそこそこ出てきますので、そういったものに抵抗のある方はご注意ください。
※本作は過去に投稿した作品を一部改稿したものとなります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる