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第18章:居場所になる
6話
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「明日香先輩、ちょっと行ってきます……その子に、警察を呼ぶように説得してあげてください」
「ちょっと行ってくるって大丈夫? 相手、かなり暴力的な人たちみたいだけれど……話し、通じないと思うよ?」
「大丈夫です。殴られるのは慣れてますし、殴られたならそれは親がろくでもないやつだと証明することができるだけなので。先輩は、その子を守っていてください」
「……なら、信じるけれど。あんまり無茶しないでね? 殴られることが前提の作戦なんて……」
半信半疑ながら明日香は真由美の考えを了承する。彼女はちらりと振々を見て、見守ってあげるように目配せした。振々も目線の意味を悟り、『わかった』とだけぽつりと言って真由美の後をついていく。真由美は暗くて周囲の状況がわかりにくいのをいいことに、手にしたスマホで撮影をする。まぁ、バレるかもしれないが、バレたらその時はその時。相手の動きが慎重になったところで大した問題ではない。
「ねえ、貴方。うちの子来たでしょ?」
「……全身に殴られたりひっぱたかれた傷がある子ですか? ベルトでシバかれた跡がある子供なら来ましたが」
真由美が問い返すと、両親らしき二人は気まずそうに一瞬黙る。
「ふーん、図星なんですね? ……あの傷、医者に見せたほうがいいですよ」
「……そんな必要はありませんよ。あれは、躾の一環ですから」
「小さい子供に痣が出るまで殴って躾? 随分、乱暴な躾ですね」
真由美が傷のことを咎めると、母親はとぼけるように大したことがないという。じゃあ、一瞬の間は何だったんだと憤ってさらに詰めると、両親の顔は明らかに不機嫌な様子になった。
「あのね。お嬢ちゃんにはわからないかもしれないけれど、私達の家には私達の家のルールがあるんです。少し過激に見えるかもしれないけれど、そうでもしないとわからない子もいるのよ」
「そりゃ、わからないでしょうね? 神社に入れない両親の言い分だなんて」
「なんだと?」
真由美が皮肉を言うと、今度は父親が声を荒げた。
「だって、貴方たちは娘のことよりも戒律だか何だか知りませんが、神社に入らないことのほうが大事なんでしょ? 今頃、貴方たちの娘、ひどい目にあっているかもしれないのに……」
「ひどい目ってどういうことよ!?」
「貴方たちの目で確かめればいいじゃないですか。あーあ、この神社、異教徒には厳しいからさ。きっと、神社の持ち主に血まみれになるくらいまで殴られているんだろうなー……」
言いながら真由美は階段を上っていく。鳥居をくぐれないというわけのわからない戒律を重んじる子の両親では、こうすれば手出しは出来ないだろう。
「そんなの、嘘に決まってる。やっぱり、神を信じない奴の事なんて信用できない」
さすがに、母親は真由美の嘘を見破るが、それでも気になって仕方がない様子。バレバレの嘘でも、自分が確認できない状況で言われると気になってしまうのが人のサガだ。その確かめたいという欲求を押さえこんでしまう、戒律を守らなきゃいけないという強迫観念には恐れ入る。
「ちょっと行ってくるって大丈夫? 相手、かなり暴力的な人たちみたいだけれど……話し、通じないと思うよ?」
「大丈夫です。殴られるのは慣れてますし、殴られたならそれは親がろくでもないやつだと証明することができるだけなので。先輩は、その子を守っていてください」
「……なら、信じるけれど。あんまり無茶しないでね? 殴られることが前提の作戦なんて……」
半信半疑ながら明日香は真由美の考えを了承する。彼女はちらりと振々を見て、見守ってあげるように目配せした。振々も目線の意味を悟り、『わかった』とだけぽつりと言って真由美の後をついていく。真由美は暗くて周囲の状況がわかりにくいのをいいことに、手にしたスマホで撮影をする。まぁ、バレるかもしれないが、バレたらその時はその時。相手の動きが慎重になったところで大した問題ではない。
「ねえ、貴方。うちの子来たでしょ?」
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真由美が問い返すと、両親らしき二人は気まずそうに一瞬黙る。
「ふーん、図星なんですね? ……あの傷、医者に見せたほうがいいですよ」
「……そんな必要はありませんよ。あれは、躾の一環ですから」
「小さい子供に痣が出るまで殴って躾? 随分、乱暴な躾ですね」
真由美が傷のことを咎めると、母親はとぼけるように大したことがないという。じゃあ、一瞬の間は何だったんだと憤ってさらに詰めると、両親の顔は明らかに不機嫌な様子になった。
「あのね。お嬢ちゃんにはわからないかもしれないけれど、私達の家には私達の家のルールがあるんです。少し過激に見えるかもしれないけれど、そうでもしないとわからない子もいるのよ」
「そりゃ、わからないでしょうね? 神社に入れない両親の言い分だなんて」
「なんだと?」
真由美が皮肉を言うと、今度は父親が声を荒げた。
「だって、貴方たちは娘のことよりも戒律だか何だか知りませんが、神社に入らないことのほうが大事なんでしょ? 今頃、貴方たちの娘、ひどい目にあっているかもしれないのに……」
「ひどい目ってどういうことよ!?」
「貴方たちの目で確かめればいいじゃないですか。あーあ、この神社、異教徒には厳しいからさ。きっと、神社の持ち主に血まみれになるくらいまで殴られているんだろうなー……」
言いながら真由美は階段を上っていく。鳥居をくぐれないというわけのわからない戒律を重んじる子の両親では、こうすれば手出しは出来ないだろう。
「そんなの、嘘に決まってる。やっぱり、神を信じない奴の事なんて信用できない」
さすがに、母親は真由美の嘘を見破るが、それでも気になって仕方がない様子。バレバレの嘘でも、自分が確認できない状況で言われると気になってしまうのが人のサガだ。その確かめたいという欲求を押さえこんでしまう、戒律を守らなきゃいけないという強迫観念には恐れ入る。
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