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第18章:居場所になる

1話:聖域

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 季節は移り替わり、夜となれば長袖なしではいられない11月のこと。もうすっかり暗くなった時間帯に部活が終わる。近所に住んでいる真由美は、妹の由香利とともに神社近くにある業務スーパーで、お弁当用の冷凍食品と大容量の豚肉を買って帰る。真由美が大きな荷物、由香利が小さな荷物で分担して帰路を急ぐ途中のこと。真由美は女の子が走って逃げているところを目撃した。
 明らかに全速力で走り、息切れしている様子の女の子の後ろからは、その両親だろうか、男女の大人が続いていた。
「由香利、先に帰ってて」
「え!?」
 由香利が驚き、何かを言いたげにしているのも放っておいて、真由美はその子を追いかける。
「これ、一人で持って帰るの……?」
 二人で運ぶような結構な大荷物なので、大変そうだと意気消沈する由香利だが、それはそれとして追いかけられていた子供の安否は自身も気にならないわけではない。お姉ちゃんはまた人助けをするために荷物を自分に託したのだとしたら、それは誇らしいことなのだと思って、一人で頑張ることにした。
 一方追いかけられていた少女は、明日香の家、大津井鹿島神社へと逃げ込んでいた。改めて怯えた少女の観察をすると、着衣が乱れている。恐らくは誰かに強く引っ張られた後。目立つところに外傷はないけれど、靴も服もボロボロだ。髪はショートで、遠目からには男に見えるくらいだ。
 しかし妙だ。彼女を追いかけていたと思しき両親たちは、鳥居の前から動こうとしない。鳥居の先にある階段を上れば、この子供を簡単に追いつめられるというのに。
「随分慌てて神社に来たけれど……何かあったの?」
 真由美は腰を落とし、視線を合わせて少女に話しかける。後ろでは、相変わらず大人の男女がこちらを見ている。
「逃げてました……」
 と、少女は言う。
「そう……あの2人から? あれは……何?」
 あれは不気味だ。鳥居を通ることを躊躇するその姿は物の怪の様にすら見えるが、実体はあるし幽霊かなにかのたぐいではない。古々や振々を怖がっては入れないわけではない、大人の人間だ。
「おい、戻ってこい!」
「下りてこないと許さないよ!」
 男女2人の怒号が轟くが、決して神社の境内へ至る階段を登ってこようとはしない。そうこうしているうちに、振々に連れられて明日香が来る。
「どういう状況……?」
「私もよくわかりません」
 明日香に尋ねられるも、真由美だってよくわからない。
『異様な精神状態だな。殺気立ってる……こんな子供に? この子は怯えているが、何をやらかした?』
 振々は少女と大人、3人の感情を見て困惑する。感情は分かっても、それがどのようにして起こったのかまではわからない。とにもかくにも、明日香たちが事情を聴かないことにはどうしようもなかった。
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