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第17章:詐欺の片棒
21話
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詐欺のお金が帰ってきたと言っても、やっぱり女子高生が大金を持ち歩くのは怖いからと、二人は給料として渡された10万円のみを受け取り、騙したファンに返すためのお金はひとまず預けておいた。また後日これからのことを話し合うということだけを決めて解散する。まだ先行きは不安だが、もう迷わないと決めた広沢は、今度こそ二人を守るため、たとえファンが二人に恨みを抱いても、そのすべての責任をかぶろうと心に誓う。
「それにしても……」
上司と殴り合いの喧嘩をしたために顔に怪我をしたという説明に、広沢は我ながら酷い言い訳だと笑ってしまう。殴られたのは本当だが、実際は喧嘩になどなっていなかったのだ。バトルガールズの二人には散々稼がせてもらっていたため、二人が事務所をやめる。それも、違約金も払うつもりがないという知らせは、上司を通り越して元締めの木村組の組長。木村総一郎にまですぐに話が行った。
広沢は土下座して二人を解放してやってくださいと頼み込んだところ、その場で上司にスーツの襟をつかまれ立ち上がらされた挙句に……上司、つまるところ組での力関係としては兄貴と呼ぶ間柄の相手にぶん殴られた。
というのが怪我の原因だ。だが、組長は面白いことを言ってくれた。
『おい広沢! 俺達は暴力団なんだ。土下座して情なんかで自分のわがままを通そうとしてるんじゃねえよ! 俺が許すから、兄弟だろうが何だろうがぶん殴って言うことを聞かせろ。喧嘩して負けを認めたほうが相手のいうことを聞く、暴力団らしくそれで決めろ!』と。
上司を殴ることに最初こそ躊躇した広沢だったが、上司はやる気満々で殴りかかってくる。それをかわし、顎先にフックを叩き込むと、その一発で兄貴分は脳震盪で立ち上がれなくなってしまったのだ。こんな一方的な勝負、喧嘩というにはあまりにもお粗末だった。
結局、喧嘩は広沢の勝利。バトルガールズと広沢の事務所脱退が認められたというわけだ。そして組長はさらに面白いことを言った。
『おい、お前。このアイドルプロデューサーの仕事で、一度でも俺達の代紋や名刺、見せびらかしたか?』
広沢は、首を横に振り、反社会的組織とかかわりがあることは一度も表に出していないと主張する。そうする必要がある場面がなかった、というのもあるし、そもそもそういうものは切り札として本当にどうにもならない時以外は使うべきではない、と考えていたからだ。
『お前ゲームで、貴重な回復アイテムを最後まで取っておくタイプだろ? エリクサー症候群だっけか?』
と笑われ、図星をつかれた広沢は、組長の前だというのに恥ずかしい思いをすることになる。こんなことを考えている場合ではないが、組長がそんな言葉を知っているのは驚きであった。
『だが、言い換えればお前はヤクザの権威なんてエリクサーがなくたってやっていけるってことだ。まったく、それなら最初っからこんなところに来ないで堅気の仕事についてりゃいいものをよー……ちょっと待ってろよ』
呆れた様子の親方が、詐欺で稼いだ金を返してきたのは、その時のことだった。
「全く、女子高生に勇気づけられるだなんてな……」
自分が上司に逆らうことが出来たのは、バトルガールズの二人が事務所を脱退するために、きっちりと戦うための武器を身に着けて覚悟を見せたからだ。子供が頑張っているのに、大人が戦わなくてどうするんだと思わされたからだ。今度改めてお礼をしないとな、と広沢は眠る前に微笑むのだった。
「それにしても……」
上司と殴り合いの喧嘩をしたために顔に怪我をしたという説明に、広沢は我ながら酷い言い訳だと笑ってしまう。殴られたのは本当だが、実際は喧嘩になどなっていなかったのだ。バトルガールズの二人には散々稼がせてもらっていたため、二人が事務所をやめる。それも、違約金も払うつもりがないという知らせは、上司を通り越して元締めの木村組の組長。木村総一郎にまですぐに話が行った。
広沢は土下座して二人を解放してやってくださいと頼み込んだところ、その場で上司にスーツの襟をつかまれ立ち上がらされた挙句に……上司、つまるところ組での力関係としては兄貴と呼ぶ間柄の相手にぶん殴られた。
というのが怪我の原因だ。だが、組長は面白いことを言ってくれた。
『おい広沢! 俺達は暴力団なんだ。土下座して情なんかで自分のわがままを通そうとしてるんじゃねえよ! 俺が許すから、兄弟だろうが何だろうがぶん殴って言うことを聞かせろ。喧嘩して負けを認めたほうが相手のいうことを聞く、暴力団らしくそれで決めろ!』と。
上司を殴ることに最初こそ躊躇した広沢だったが、上司はやる気満々で殴りかかってくる。それをかわし、顎先にフックを叩き込むと、その一発で兄貴分は脳震盪で立ち上がれなくなってしまったのだ。こんな一方的な勝負、喧嘩というにはあまりにもお粗末だった。
結局、喧嘩は広沢の勝利。バトルガールズと広沢の事務所脱退が認められたというわけだ。そして組長はさらに面白いことを言った。
『おい、お前。このアイドルプロデューサーの仕事で、一度でも俺達の代紋や名刺、見せびらかしたか?』
広沢は、首を横に振り、反社会的組織とかかわりがあることは一度も表に出していないと主張する。そうする必要がある場面がなかった、というのもあるし、そもそもそういうものは切り札として本当にどうにもならない時以外は使うべきではない、と考えていたからだ。
『お前ゲームで、貴重な回復アイテムを最後まで取っておくタイプだろ? エリクサー症候群だっけか?』
と笑われ、図星をつかれた広沢は、組長の前だというのに恥ずかしい思いをすることになる。こんなことを考えている場合ではないが、組長がそんな言葉を知っているのは驚きであった。
『だが、言い換えればお前はヤクザの権威なんてエリクサーがなくたってやっていけるってことだ。まったく、それなら最初っからこんなところに来ないで堅気の仕事についてりゃいいものをよー……ちょっと待ってろよ』
呆れた様子の親方が、詐欺で稼いだ金を返してきたのは、その時のことだった。
「全く、女子高生に勇気づけられるだなんてな……」
自分が上司に逆らうことが出来たのは、バトルガールズの二人が事務所を脱退するために、きっちりと戦うための武器を身に着けて覚悟を見せたからだ。子供が頑張っているのに、大人が戦わなくてどうするんだと思わされたからだ。今度改めてお礼をしないとな、と広沢は眠る前に微笑むのだった。
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