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第17章:詐欺の片棒

13話

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「そうなのよ。私の出汁を飲んでると思うとちょっと気持ち悪くてさー……でも、そうやってお金を稼いでグッズを作ってファンを増やし、ファンを増やして大きい会場ハコを借りて、大きい会場で新たなお客様と出会って知名度を上げる。知名度を上げたらまたお金を儲けて、さらに多くのグッズと大きな箱を借りる。
 RPGで、経験値とお金を貯めてより強い装備を整えてより強い敵と戦うっていう感じと似てるかもね。地道な努力の積み重ねだよ……そのためにはスライムやゴブリンだけじゃない、ゾンビとだって戦わなきゃね」
「お客様をゾンビ扱いってひどくない!?」
「だってー……いい年して、私のパンツ見せてほしいとか言ってくる人もいるし……」
「うわー……」
 やはり、アイドルという仕事は大変らしい。こんなことを言われたら、私なら蹴ってしまいそうだと明日香は思う。歌が下手な明日香は元々アイドルになる気なんてないが、それでなくとも短気では絶対に務まらないようだ。
「ただ、ウチのユニットのかなり特殊なファンサービスの中に、浄化っていうのがあるの」
「浄化?」
「ローキックをかますの。一日人数限定で、私達の足が痛まない程度に」
「えー……何それ高度なSMプレイ?」
「あの、裕也さんみたいに逞しい人も来て、追加料金払うからって特別にミドルキックをしたこともあるよ」
「あはははは……すごい」
 思わず乾いた笑いが漏れた。なるほど、裕也くらいに逞しい男ならミドルキックも受け止められるだろうが、それでも彼女たちの打撃技は女性としては練度が高い。適切な防御なしに無防備で喰らってしまえば、男でも悶絶する程度の威力はあるはずだ。無茶をする男もいるものだと、明日香は世界の広さを思い知った。
「……それで、さ。それだけ頑張っているところでなんなんだけれど、カナ……何か無理してない? あの、相方のシホって子もなんかこう、陰があるような……」
「何言ってるの? そんなことないって……もしかして明日香先輩、アイドルが枕営業をしてるとか、そういうの信じちゃってる感じ?
 もちろん、そういうのもないわけじゃないと思うけれど、私達そこまでやるほど儲かってないわけじゃないよー」
「……本当に? なんというか、私、最近何回も人助けをやっているからかな? 人の困っている感じというか、オーラみたいなものが何となく見えるんだよね。オーラって言うと、なんかオカルトっぽいけれど、仕草とか目線とか表情とかににじみ出るって言うかさ……そういうのを、オーラって呼んでるの。私の心配のし過ぎだったらいいの。
 でも、なんというか安心したいじゃない? 同じ道場の仲間が、何か後ろめたい事とか、嫌なことに巻き込まれていると思うと、私は耐えられなくって……」
 明日香はカマをかける。彼女にそんな能力はない。だが、百合根の言っていることが本当で、それを後ろめたく思っているのなら、こうやって揺さぶれば必ず心は揺れ動くだろうと、明日香はそれにかける。
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