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第16章:恋心の行方
10話
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「普通はやらない。ってか、あいつは普通じゃないぞ。だから真由美は、俺が来たときに助けを求めなかった。『そこで見ていて』って感じの態度だった……俺だって、あいつが助けを求めている風だったら、真っ先に助けたぞ? 真由美は……うん、やばい奴だよ。特殊な才能の持ち主だ。あのポイ捨て男は女を本気で殴るような度胸がないこともわかっていたようだし、たとえ殴られたとしても……殴られた、ということは『俺が助けに入る大義名分になる』とでも考えていたんじゃないかな?」
「そりゃ、真田さんはマジで普通じゃないですね」
「あぁ、暴力的な父親から妹を守るために、わが身を犠牲にしていたような奴だ。真由美は自分の痛みに対して割と無頓着だよ……恐ろしい才能だよ。良いか悪いかはわからないけれどな……思えば、あいつは父親と立ち向かう時も、俺が助けに入るのを断って、一人で何とかしちまった」
「それ、どういう状況だったんですか?」
「どういう状況って……スタンガンを酒の瓶で叩き落とされて、髪の毛を掴まれた絶体絶命の状態……その状況で俺が助けに入ろうと思ったら、ナイフで父親の脚を刺して、自分で解決しちゃったんだ」(第4章25話参照)
その時の常用を詳しく説明されたアキラは口をあんぐりと開けている。
「とんでもないですね」
「とんでもない奴さ。無茶し過ぎなところはあるけれど、俺もついついあいつの意思は尊重しちゃうのが良くないのかもな……女の子があんまり危ないことをするもんじゃないと思うけれど、だからと言って戦いからむやみに遠ざけるのも違うと思うし……悩みどころだよ。いい奴なんだ……妹を守るために自分が積極的に殴られに行くような奴だし、自分を危険に曝してでも誰かを守ろうとする気概と根性は並じゃない。
だからこそ長生きしてほしいし、自分を大事にしてほしいんだけれど……まだまだ危ないことしそうで。いい奴だからこそ、自分を危険に曝してしまうって言うのがジレンマだよなぁ……自分を危険にさらさなくても、いい奴になる方法がありそうなものなのにさ。女なんだから、あんまり危険なことはしないでほしいよ」
「先輩って、やっぱり女性は守るものだと思ってるんですか?」
「そりゃまぁ……まぁ男と女じゃ生殖の役割が違うだろ? 男はその気になれば一年に何人もの女を妊娠させられるかもしれないけれど、女性は1年に1回だけだ。女のほうが役割的に替えが効かないし、だからこそ大怪我したら困る。それに何より女のほうが弱いんだから守らなきゃだし。だから、危ないことは男が積極的に行くべきじゃあないのか?」
「先輩、感情じゃなくって論理的に守る理由を語るところがすごいですよ……今どき、『女はこう』、『男はこう』って言ったら性差別だとか、そういうことを言う人もいますし、確かに、男だからこうって決めつけられたら嫌なことはありますが……先輩の考え方は参考になります」
「差別と区別は違うよ。お前と以前話したっけ? 男は肉、女はスイーツとか決められるのはウザい。男が男を好きでもいいし、女が女を好きでもいいって……心はどうにでもなるけれど、肉体はどうにもならないんだから、女は比較的守られるべきって考えに……感情論で何かを言うのは間違っているだろ」
「そうですね……はぁ、俺も真由美さんみたく勇気を出せたはいいけれど、反撃は出来なかったし、ちゃんと体を鍛えなきゃだなぁ」
「なら、相撲部に入るか?」
「遠慮しときます。自分よりも強い奴に向かって行けるような根性はないっすよ」
「それでいい。自分より弱い奴に向かっていくために強くなればいいんだから」
「あはは……言いますね」
アキラはそう言って苦笑する。自分には、相撲部のようなバリバリの運動部はちょっと合いそうになかった。
「そりゃ、真田さんはマジで普通じゃないですね」
「あぁ、暴力的な父親から妹を守るために、わが身を犠牲にしていたような奴だ。真由美は自分の痛みに対して割と無頓着だよ……恐ろしい才能だよ。良いか悪いかはわからないけれどな……思えば、あいつは父親と立ち向かう時も、俺が助けに入るのを断って、一人で何とかしちまった」
「それ、どういう状況だったんですか?」
「どういう状況って……スタンガンを酒の瓶で叩き落とされて、髪の毛を掴まれた絶体絶命の状態……その状況で俺が助けに入ろうと思ったら、ナイフで父親の脚を刺して、自分で解決しちゃったんだ」(第4章25話参照)
その時の常用を詳しく説明されたアキラは口をあんぐりと開けている。
「とんでもないですね」
「とんでもない奴さ。無茶し過ぎなところはあるけれど、俺もついついあいつの意思は尊重しちゃうのが良くないのかもな……女の子があんまり危ないことをするもんじゃないと思うけれど、だからと言って戦いからむやみに遠ざけるのも違うと思うし……悩みどころだよ。いい奴なんだ……妹を守るために自分が積極的に殴られに行くような奴だし、自分を危険に曝してでも誰かを守ろうとする気概と根性は並じゃない。
だからこそ長生きしてほしいし、自分を大事にしてほしいんだけれど……まだまだ危ないことしそうで。いい奴だからこそ、自分を危険に曝してしまうって言うのがジレンマだよなぁ……自分を危険にさらさなくても、いい奴になる方法がありそうなものなのにさ。女なんだから、あんまり危険なことはしないでほしいよ」
「先輩って、やっぱり女性は守るものだと思ってるんですか?」
「そりゃまぁ……まぁ男と女じゃ生殖の役割が違うだろ? 男はその気になれば一年に何人もの女を妊娠させられるかもしれないけれど、女性は1年に1回だけだ。女のほうが役割的に替えが効かないし、だからこそ大怪我したら困る。それに何より女のほうが弱いんだから守らなきゃだし。だから、危ないことは男が積極的に行くべきじゃあないのか?」
「先輩、感情じゃなくって論理的に守る理由を語るところがすごいですよ……今どき、『女はこう』、『男はこう』って言ったら性差別だとか、そういうことを言う人もいますし、確かに、男だからこうって決めつけられたら嫌なことはありますが……先輩の考え方は参考になります」
「差別と区別は違うよ。お前と以前話したっけ? 男は肉、女はスイーツとか決められるのはウザい。男が男を好きでもいいし、女が女を好きでもいいって……心はどうにでもなるけれど、肉体はどうにもならないんだから、女は比較的守られるべきって考えに……感情論で何かを言うのは間違っているだろ」
「そうですね……はぁ、俺も真由美さんみたく勇気を出せたはいいけれど、反撃は出来なかったし、ちゃんと体を鍛えなきゃだなぁ」
「なら、相撲部に入るか?」
「遠慮しときます。自分よりも強い奴に向かって行けるような根性はないっすよ」
「それでいい。自分より弱い奴に向かっていくために強くなればいいんだから」
「あはは……言いますね」
アキラはそう言って苦笑する。自分には、相撲部のようなバリバリの運動部はちょっと合いそうになかった。
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