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第16章:恋心の行方

8話

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 そうして、部活が終わった後、アキラは裕也を呼び出し、神社のベンチに肩を並べて話をしていた。
「本当は一人で奴を殴り返せればよかったんだけれど……はぁ、俺も三橋先輩みたいに体が逞しかったらなぁ……って、ちょっと力不足を感じちゃいますよ」
「はは、お前も相撲部に入るか? 男性部員がいないから歓迎するぜ?」
「どうでしょうねぇ。今後の人生で喧嘩をしなきゃいけないシチュエーションにまた遭遇するかどうか、わからないからあんまり気乗りしないんですが……俺、キッツい運動に対しては根性なくて……ちょっとした筋トレはしてますけれども、己を追い込むような、限界を試すような鍛錬はちょっと……」
「そっか、そりゃ残念だ」
「……でも、根性のない俺でも、先輩に助けてもらってから、『他人のために体を張る』ってことの良さをわかってきました。みんな俺を褒めてくれるし、それに俺も堂々とした気分になれる。自他ともに俺を見る目が変わってくる。今日は酷い目にあったけれど、これからも何かあったら積極的に人助けはしていきたいなって、思います」
「いいじゃねえの。その心意気、イケてると思うぜ。俺と出会ったころよりも格好良くなったじゃないか」
「じゃあ、言っていいですかね? 先輩……俺、先輩のことが好きで……恋人になって欲しいって思ってます」
 話の流れでいきなりの恋の告白、意味を理解するのに少し時間がかかり、裕也はしばらく沈黙してしまう。
「……お前がゲイだってのは初対面の時から知ってしまっていたが。こう、改めて告白されると、やっぱり実感がわくな」
「迷惑ですかね?」
「どうかな……俺は、お前のことは好きだし、友達として付き合う分にはいいと思うよ。恋人って、セックスしなきゃいけないってもんでもないし、まぁ、手をつなぐくらいならアリかもしれないが……まぁ、裸で抱き合うことなら、明日香のに兄ちゃんや父さんで慣れてるし?」
「そうなりますよねぇ……はは、裸で抱き合う、か。ちょっと相撲がしたくなってきました」
 裕也の煮え切らない返事にアキラは苦笑する。
「まぁ、いいんです。男と女という、至極一般的で多数派の告白でも、断られることなんて日常茶飯事です。それでも、友達だと認めてくれたことは俺は嬉しいと思ってます」
「そう言ってもらえるなら、俺も気が楽だよ……よし、告白を断ったことのお詫びじゃねえけれど、今日は俺が奢るからファミレスにでも行こうぜ。お前が、格好いいことをしたご褒美だ、受け取れ。パフェでも奢るよ。フライドチキンのほうがいいならそうするが……」
「いいんですか? ゴチになりますよ。もちろん、パフェのほうで」
「いいに決まってるだろ? いいことした時にご褒美が無かったら、モチベーションも失せるだろ?」
 裕也はそう言ってアキラの手を握り、神社を出ていく。裕也の大きな手から伝わるぬくもりに喜びを感じながら、アキラはこのひと時を噛み締め歩いていく。
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