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第16章:恋心の行方
4話
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「わ、私……触られてました! こいつに!」
被害女生徒のお墨付きも得られた。ここで退いたらダメだ。
「だ、そうですよ。違うというのなら、まずは警察に身の潔白を証明してくだ――」
言い終えようとしたところでアキラは殴られた。思わず尻餅をつき、再度の撮影をしていたスマートフォンを取り落とす。カバーをつけているとはいえ、壊れていないか心配だ。
「うぜぇんだよ。正義の味方気取りかよ!? 雑魚の癖に俺にたてつくとか、やっぱり死にてえのか、おい!?」
茫然としながら男を見上げる。いきなり殴られるのは父親や母親にやられたことがあるから慣れていたつもりだったが、やはり思いもかけないところから殴られると思考が硬直する。恐れと驚きで足に力が入らなくなったが、やはり経験に勝る強さはない。アキラの脳は急激に冷静になり、周囲を観察する余裕が生まれた。気付けば周囲は巻き込まれないようにと人が遠巻きにしているが、そのうちの何人かが撮影をしている。いざという時は彼らの証言を得ることもできる。
男のポケットからはスマートフォンのストラップがはみ出ている。あれを奪ってしまえば、男は自分を追いかけざるを得ない。自分が降りる駅に着いたら、あれを持って外に出て、交番に駆け込む。もしかしたら窃盗の罪になるかもしれないが、それでもいい。奴を交番におびき寄せられるならば、それで。
男は餅をついていたアキラの髪を掴み、アキラの頭を思い切り揺さぶる。
「おい、なんとか言えよ、クソガキ! 人を痴漢呼ばわりして詫びの一つもないのか?」
「うるせぇ!」
景色が歪んでいる状態で、アキラはがら空きの股間にパンチを加えると、相手がひるんだ隙にスマートフォンを奪う。
「お前が痴漢かどうかはともかくとして、ロクでもない奴なのはよくわかったよ。返してほしかったらこの駅に降りるんだな!」
丁度止まった電車の扉が開き、高校の最寄り駅にアキラは降りる。電車を降りたアキラは、そのまま駅前の交番まで逃げようとするも、人の壁に阻まれ足を止めてしまう。すると、後ろから追ってきた男に捕まり、後ろから蹴りを入れられて地面に転がされたが、ここまでくればもう大丈夫。
「誰か警察! 交番!」
大きな声が聞こえる。これだけ人の目があるのだ、そう簡単に逃がしはしないだろう。
「この野郎……どうやら死にてえようだな……」
「いいんですか? おまわりさん、来ちゃいますよ?」
「うるせぇ! こうなったらてめえだけでも死ねや!」
男がアキラを蹴り飛ばす。アキラは腕をあげて頭部を守り、何とか耐え忍ぶしかないと思っていたが、それを唐突に終わらせる助けの手が差し伸べられた。地面にへたり込むアキラに夢中になっている男は、それが迫ってくることに気づけないまま、突如視界に現れた女の催涙スプレーをまともに顔面に喰らってしまう。
「うぎゃぁ!」
間抜けな声を上げて男は怯み、そのままたまらず尻もちをついた。顔面に走る強烈な痛みに涙と咳が止まらない。
被害女生徒のお墨付きも得られた。ここで退いたらダメだ。
「だ、そうですよ。違うというのなら、まずは警察に身の潔白を証明してくだ――」
言い終えようとしたところでアキラは殴られた。思わず尻餅をつき、再度の撮影をしていたスマートフォンを取り落とす。カバーをつけているとはいえ、壊れていないか心配だ。
「うぜぇんだよ。正義の味方気取りかよ!? 雑魚の癖に俺にたてつくとか、やっぱり死にてえのか、おい!?」
茫然としながら男を見上げる。いきなり殴られるのは父親や母親にやられたことがあるから慣れていたつもりだったが、やはり思いもかけないところから殴られると思考が硬直する。恐れと驚きで足に力が入らなくなったが、やはり経験に勝る強さはない。アキラの脳は急激に冷静になり、周囲を観察する余裕が生まれた。気付けば周囲は巻き込まれないようにと人が遠巻きにしているが、そのうちの何人かが撮影をしている。いざという時は彼らの証言を得ることもできる。
男のポケットからはスマートフォンのストラップがはみ出ている。あれを奪ってしまえば、男は自分を追いかけざるを得ない。自分が降りる駅に着いたら、あれを持って外に出て、交番に駆け込む。もしかしたら窃盗の罪になるかもしれないが、それでもいい。奴を交番におびき寄せられるならば、それで。
男は餅をついていたアキラの髪を掴み、アキラの頭を思い切り揺さぶる。
「おい、なんとか言えよ、クソガキ! 人を痴漢呼ばわりして詫びの一つもないのか?」
「うるせぇ!」
景色が歪んでいる状態で、アキラはがら空きの股間にパンチを加えると、相手がひるんだ隙にスマートフォンを奪う。
「お前が痴漢かどうかはともかくとして、ロクでもない奴なのはよくわかったよ。返してほしかったらこの駅に降りるんだな!」
丁度止まった電車の扉が開き、高校の最寄り駅にアキラは降りる。電車を降りたアキラは、そのまま駅前の交番まで逃げようとするも、人の壁に阻まれ足を止めてしまう。すると、後ろから追ってきた男に捕まり、後ろから蹴りを入れられて地面に転がされたが、ここまでくればもう大丈夫。
「誰か警察! 交番!」
大きな声が聞こえる。これだけ人の目があるのだ、そう簡単に逃がしはしないだろう。
「この野郎……どうやら死にてえようだな……」
「いいんですか? おまわりさん、来ちゃいますよ?」
「うるせぇ! こうなったらてめえだけでも死ねや!」
男がアキラを蹴り飛ばす。アキラは腕をあげて頭部を守り、何とか耐え忍ぶしかないと思っていたが、それを唐突に終わらせる助けの手が差し伸べられた。地面にへたり込むアキラに夢中になっている男は、それが迫ってくることに気づけないまま、突如視界に現れた女の催涙スプレーをまともに顔面に喰らってしまう。
「うぎゃぁ!」
間抜けな声を上げて男は怯み、そのままたまらず尻もちをついた。顔面に走る強烈な痛みに涙と咳が止まらない。
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