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第14章:愛情不足の代償

14話

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「得意なことでも、金にならなければ褒めないとか、スポーツや勉強以外の特技はダメなんて考えの人もいます。あなたの家族がそうなのかはわかりませんが、歌で見直してもらうならソロで歌えるくらいでないと、きっと……」
「わかってる……けれど……」
「……あの、その、言いづらいのですが……もう、家族に期待するのは辞めたほうがいいと思います。人を変えるのって難しいので。あなたの家族があなたにかけるべきは、『かわいい』とか『頑張ったね』とか、そういうことであって……肯定してあげることだと思うんですよ。私は、あなたの家族に会ったこともないし話をしたこともないですが……頑張っている人を、いっつも馬鹿にするってすごくマナーのなっていない家族と言いますか……よくまぁ、そんな仕打ちが出来るなって。人の心がないなって思います。そんな人の心がない奴に、あなたが人として接してたらそりゃ、疲れちゃいますよ」
「……」
 真由美に言われると、望海は黙って何も言えなくなってしまった。
「私の家族はですね、父親がもう最低のクズでした。いつも酒を飲み、酔っぱらって帰って来ては、家族に暴力を振るう人で……何度私や妹が泣いても、酒を飲むのは辞めてくれないし、母親はもちろん私だって何度も殴られました。まぁ、その父親もクズなんですが、そんな父親と離婚もせずに、子供を危険に晒す母親もクズなんですがね……。
 そんな父親が、私達を殴るのをやめたきっかけはなんだと思います? そんな母親が、離婚に踏み切ったきっかけはなんだと思います?」
 真由美が難解な問題を出す。当然望海は答えられるはずもなく沈黙する。
「えっと……わからない」
「武力です。私が父親を、スタンガンで痺れさせたり、ナイフで刺しました……」
「えぇ!? 捕まらないんですか?」
 いつもの反応だ。真由美はいつものように説明をする。
「実の娘に刺されたなんて、恥ずかし苦て言えなかったんじゃないですかね? それに、それまで子供に暴力を振るってきたっていうのが原因ですから、私のそれは正当防衛です。父親は、子供に対して先に暴力を振るっていた、という弱みをさらしたくなかったんでしょう。結局ですね、人を変えるのって、すごく難しくって。そして、自分の間違いを認めさせることなんて、それ以上に難しいことなんです」
 結局、父親を変えたきっかけは、自分が間違っていることを認めさせたことではなく、暴力を振るえば武力で返されるという戒め、恐怖によるものであった。本質的には人間は変わっていないのである。
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