ハーレム相撲部～女4人に男1人。おまけにかわいい守護霊も憑いてきて、一体何がどうしてこうなった？～

第13章：お祭りの日

22話

「考えて見りゃ、古々も振々も、読み方を変えるとフルフルだもんな、最初から隠すつもりもなかったんだろうけれど……フルフルって、外国の悪魔だろ？　なんで日本に？　っていうか、なんでそんなもんがタケミカヅチの神使なんかやっているんだよ！？　おかしいだろ……」
　まだ全然話についていけていない真由美を置いてけぼりに、裕也は古々に質問を浴びせかける。
『あー……それは、話すと長いことながら……あのね、そのソロモン72柱のフルフルって、翼と、燃えている尾を持つ牡鹿……ついでに雷を操るっていうのは素華ちゃんが言った通りなんだ思うけれど……』
「知ってます。あと、フルフルは男女の情欲を掻き立てる力もあるとも言いますよね。こう、淫魔の類なんですかね？」
　素華の古々に向けたまなざしはまだキラキラしたままだ。
「素華ちゃん、すごい詳しいね……たまに変な知識があるよね、素華ちゃん。人んちの住所特定したりとか……」
　そんな素華の発言に、明日香はなんでそんなことまで知っているんだと苦笑した。
「情欲ってそれ、古々と振々も持ってる能力じゃねえか……」
そういえば、古々は男の欲求を、振々は女性の欲求を掻き立てる能力があったはずだと裕也は思い出す。
『そう。そんなフルフルが、ある時ポルトガルから長崎を経由して日本にたどり着き、そこで雷神タケミカヅチのことを知ったの。雷を操る神と呼ばれし者……しかし、『鹿を神使として扱うのは面白い冗談だ』って。フルフルはタケミカヅチが生意気だからぶちのめそうとしたわけよ。丁度この大津井の付近でね。けれど、結果は惨敗……フルフルは雷神タケミカヅチに負けてしまい、翼と角を引きちぎられた。
　そしてその角と翼に秘められた魔力は、付近に住んでいた鹿に取り込まれ、その鹿を巨大で狂暴な個体に変えた。それこそ、山の怒りと呼ばれるくらいには強い個体にね。後は、この神社に伝えられている通り。大津井弓利おおついの　ゆみとしがその巨大な鹿を弓で射抜いて殺し……山の怒りを鎮めるために、この神社の土地に社が立てられ、二頭の鹿の亡骸はその社に安置された。
　いつかしかそれは明治時代に「鹿を祀っているならタケミカヅチの神社だろう」ってことにされて、この神社は鹿島神社扱いになった……そしたら、この神社にもタケミカヅチが訪れたと、いうわけ』
「また複雑な出生をしているんだな、お前ら。でも、それだとどうしてそんなお前らがタケミカヅチに仕えているんだ？　親の仇じゃないのか？」
『うーん、別に親の仇でもないのよね。まず何より、フルフルは死んでいない。今も世界のどこかで、人々の情欲が満たされた時の感情を啜って生きている。だから仇ではないし……親が恥をかかされたというちょっとしたもやもやはあれど恨みはないの。それに、あまりにも強い親が惨敗するほどの強大な力。それに魅入られてしまった、というのが大きいわ。それに、何よりね、時代が変わったのよ』
「と、言うと？」
　素華が首をかしげる。