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第13章:お祭りの日

15話

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「私は、ヤクザの娘で、しかも親がフィリピン人。隠してたつもりなのに、どこかから漏れて、私は中学校で虐められてて……まぁ、それで鬱憤も溜まっていたんだけれど。それで、盲導犬を大怪我させた奴を地獄に送って、虐げる側に回って気付い茶ったんだよね。私は誰かを虐げることが、この上なく大好きなんだって」
「百合根さん、普通にしていればおとなしそうに見えるのに、虐める人、いるんですねぇ。」
「いるのよ? 人間ってのは、いじめをしたい生物なの……人間には良心や共感性、思いやりという感情がある一方で、マウントを取りたい、人を甚振りたい、そんな感情もまたある。でも、それを無実の一般市民にやってしまうと、問題でしょ? でもね、悪党にやれば、みんな問題にしない……どころか褒めたり、喜んでくれるからさ……だから私は、人を虐げたいっていう欲求を、悪人に対して向けることで満たしているの。盲導犬を怪我させた奴、私を虐めたやつ……こいつら……そういう悪人たちに。
 私の目的がそんなだから、純粋に人助けをしたい貴方たちとは目的も異なっちゃうわけだけれど……やっぱり、裕也的にはそれは問題なのかしら? 人を虐げるために、虐げてもいいような悪人と出会うために人助けをしたいだなんて不純な動機で人助けをするのは」
「まぁ、そんなこったろうと思ってたから問題ないよ。お前が一般市民に迷惑をかけることがないのは知ってるし……ただ、お前のやり方はなんというか、危険すぎるからな。あんまり、心配させないでくれとは思うけれど」
「えっと……まぁ、悪い人をなんとかしてくれるなら、それに越したことはないですし。それで地獄を見ても、ある程度は自業自得でしょうし……一般市民に迷惑をかけないなら、私はいいと思いますけれど……でも、あんまり危険なことはしないでくださいね?」
「わかってる」
 二人は百合根のやっていることを批判しなかった。危ないから辞めたほうがいいと言われるのも想定内だ。
「わかってるけれど、止められないのよね。私は、人を虐げる快感がないと生きていけないみたいで。悩ましいのが、人を甚振るのが楽しい反面で、人を救いたいっていう矛盾した感情を抱えている事なんだよね……でも、最近はちょっと吹っ切れたんだ。遼君が私の手助けで、困りごとを解決できたように、私には私にしかできない方法で人を救うことができるって、自信が持てたから。
 だからさ、貴方たちと違って完全な善行ではないかもしれないけれどさ、私には私にしかできない方法で人を救おうと思うの。必要悪って言うの? 私の悪党を地獄に送る趣味で、誰かが笑顔になってくれるなら……私は、今のままでいいと思ってる」
「うーん……何というか、百合根さんも難儀な性格していますねぇ」
 百合根の矛盾した感情という告白を聞いて真由美は苦笑する。
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