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第12章:家出のお手伝い・後編

16話

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「色々とありがとう、真田さん。君がいなかったら途中で心が折れていたかもしれないけれど……君のおかげでやり遂げられた。いつか、君にも、幸福があることを祈ってる」
 最初の作業者で励ましあったとき。そして、自分の親にナイフを刺してまで決別し、今も強く生きているという体験談。二回目の作業所で、毎日のように声をかけて見守ってくれたこと。真由美がいなければ自分は親の圧力に負けていたかもしれない。そう思うと感謝せずにはいられなかった。
「聞きましたよー。結局親は説得できなかったけれど、祖父を説得したって話でしたね。それで、今から受験勉強を切り替えるって……夏休みこそ勉強しなきゃいけない時期なのに、その半分以上を労働に費やしちゃったわけで……遅れを取り戻すのはめっちゃ大変そうですし、遼さんこそ頑張ってくださいね」
「うん……君も。将来何をしたいと考えているかはわからないけれどさ。人助けもいいけれど、君自身が立派な大人になれるよう、頑張ってね」
「あー……それは、そうですねぇ。私、将来何やりたいとか全然決めていませんし……そういう意味では、西野さんが羨ましいですよ……はは」
 他人の夢を応援していながら、自分には全く夢がない事を気づかされて真由美は苦笑する。
「あんまり自分のこと、疎かにしちゃだめだからね。人助けって言うのは、自分も救ってなんぼでしょ?」
 真由美に元気づけられた遼は、逆に真由美を元築けるようにそう言った。
「ははぁ……人助けは自分も救う、ですかぁ……肝に銘じておきます」
「それじゃ」
 力なく苦笑する真由美に、さわやかな笑顔を向けて遼は参拝に向かう。参拝はスマートフォンで調べた作法をたどたどしく行うものだったが、その気持ちは本物で。古々が観察していると、満たされた心からは感謝の念がにじみ出ていた。
『いい感じじゃない。裕也君や明日香ちゃんだけじゃなく、素華ちゃんも真由美ちゃんも……相撲部のみんなが積極的に人助けをしてくれる。こうやって人助けの輪が広がっていけば、神社に感謝の念が集まって、タケミカヅチ様へのおもてなしも恰好つく形になる』
 遼の参拝の様子を見ながら古々は満足げに微笑む。隣で佇んでいた振々も満足げに頷いた。
『他の奴らも案外、人助けに積極的なわけだし、私達の姿を見せて協力を頼むか?』
『確かに、仲間外れにするのは心苦しいしね。それに私達がいたほうが便利なこともある……いや、でもやっぱりあまりにも巻き込み過ぎると問題も多くなりそうだし……悩ましいわね』
 真由美も素華も、裕也たちのように人助けをするようになっている。それならいっそ自分たちの姿を見せてあげてもよいのではないかとも思うが、多くの人間に姿をさらすのはリスクが高い。どうするべきだろうか……と、考えるが、時間はまだあるのだから、保留してもよいだろうと、古々と振々は結論付けた。

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