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第12章:家出のお手伝い・後編

11話

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「うーん、そんなにぐいぐいと聞いちゃう?」
「ぐいぐい聞かれたくないなら、そんな思わせぶりなこと言わないでくださいよ……気になっちゃうじゃないですか」
 百合根に意地悪な質問をされた百合根は、直球の正論で返されてそれもそうねと苦笑する。
「真由美ちゃんは、私の話が面白かったりする? それとも、興味本位で聞いてる?」
「なんで、でしょうかね? そりゃ……好奇心はもちろんあるのかもしれませんが。木村先輩の人となりを、もっと知りたいのかもしれません。木村先輩はダークヒーローなのか、それとも……実は、制裁だなんて建前で、あの男の人の稼いだお金を横領して私腹を肥やしてるだけだったりして? そんな、失礼なことも含めていろいろ考えているんです。その、もやもやの答えを知りたくて」
「真由美ちゃん、ほんと、失礼ね。でも正直なところは嫌いじゃないわ。ただ、これだけは言いたいのだけれど、私は私腹なんて肥やしていないからね? 盲導犬協会から感謝状を貰えるくらいに寄付してるのよ? 地獄へ叩き落した男のお金を横領しているのは事実だけれど、横領したお金はちゃんと盲導犬協会に還元してるから……」
「え、すごいですね。意外……」
「以外って真由美ちゃん、あんたホントに失礼ね。でもヤクザの娘がお金儲けをしていたら、私腹を肥やしてると思うのも当然か……そりゃちょっとは贅沢してるけれど、ホントにちょっとよ? ブランド物を爆買いするとかそういうのはやってないし……」
 冗談めいて口にした真由美の言葉に笑いながら、百合根は言う。続く独り言のようなセリフは、少し言い訳がましかったし小声だった。
「今度、感謝状見せてあげよっか?」
「……お願いします!」
 最初、ヤクザの組長の娘と聞いて、百合根のことを近寄りがたい人だと思っていた真由美であった。しかし、話してみると案外、普通の人にはできない事をやっているだけなのかもしれない、と真由美は思う。ネットでもテレビでも、ニュースを見れば胸糞悪いニュースがずらりと並び、そのたびに罰が軽いと思うことが日常茶飯事だ。百合根の語る盲導犬への虐待の話も、実際に裁判にかけられ、罪状が出たらあまりにも罰が軽すぎる結果になったかもしれない。伝聞だけではあるが、そいつを徹底的にやって、地獄に落としてやらないといけないとすら思ってしまう。もちろん、それは正当な裁判を経た正当な裁きではないので、法的に許されることではないのかもしれない。だからと言って木村先輩を悪人と断ずるのは違う。学級組長だとか、ヤクザが親だとかで、割と怖いイメージがある(怒らせたら一般人とは比べ物にならないくらいに怖いのは間違いなさそうだが)百合根だが、聞けば答えてくれそうな今日という機会にたくさん話をしてみるのもいいんじゃないかと、真由美はまだまだ深く彼女に踏み込んでいく。
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