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第11章:いいお話があります

11話

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「それはお兄ちゃんだけ……でもないか。私もぶちのめしたいというのは同意。そりゃ、それが一番手っ取り早いしすっきりするんだけれど……出来れば警察に相談するのが一番いい案件じゃない? 破れかぶれになられてその動画を流出させられたら困るし……」
 明日香の家は武闘派であり、悪く言えば脳筋だ。明日香も、おおむね暴力を肯定しているのがこの家の恐ろしいところである。だが、もみ消しが多かったり、何かと面倒な家族間での犯罪ならばともかく、今回は他人同士の犯罪である。それならば、証拠を取って警察へ行くのが一番だと明日香は考える。
「リベンジポルノとか最低。その彼氏とやらは今どういう状態?」
 話の一部始終を聞いて、素華もさらに突っ込んでくる。
「もう別れたいのに、その写真を盾に脅してきますし……別れるならばらまく、ビジネスをやめるならばらまくって。そうじゃなかったら、こんなこととっくにやめてるよ! お金が手に入らないなら風俗や夜のお店で働けって言われてるし……」
「……それは、犯罪だって、その男には伝えたの?」
 素華が尋ねると、美紀は頷きながら続ける。
「ました……けれど、『お前がやめるなら俺は終わりだ。お前も道連れにしてやる』って……話にならない感じで……その時のメッセージが、これです」
 美紀は、自分の裸が映った部分を指で隠しつつ、メッセージアプリのCOCOAで送られたやり取りを見せる。女性の裸ということで思わず目を逸らしたが、スクロールして画像が見えなくなったら遠慮なく見せてもらった。
 一度も会ったことのない相手とは言え、これはもう相手はクズであると認めるしかないだろう。
「それで、本当にそういうことをやりそうなやつだったりする?」
 素華が尋ねると、美紀は首を横に振る。
「わかりません……一応、警察に捕まったという意味での前科とかはなさそうな感じですが、あの感じじゃ捕まっていないだけで色んな事をやりなれてそうですし……たまに店員とかに横暴な態度をとる感じだし……」
「普段からそういうことをする奴なら、捕まったら何するかはわからなくなるなぁ……はぁ。じゃあ、警察はナシのほうがいいわね」
 これは話し合いで何とか出来る相手ではないな、と素華は頭を抱える。
「やっぱり、ぶちのめしたほうが早いんじゃないの? 警察なんて何とも思ってなさそうだし」
 裕也が言う。庄司も横で頷いた。
「そうでなくとも、警察ってのは一般的な方法じゃ、『事後の対処』しかできないだろ? 裸の動画を拡散されたら、相手が警察に捕まろうが何だろうが美紀さんは負け、なんだ。そんなゴミみたいな男、どうせまともに金もないんだろうから損害賠償だってきちんと払ってもらえるかもわからないし?」
 裕也が言い終えると、庄司はうんうんと頷く。
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