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第10章:家出のお手伝い・前編

14話

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 ヤクザと、借金で身を崩した男たちのやり取りを見て、遼と真由美は唖然としている。
「俺、とんでもない所に来ちゃったな……」
「ほんとですね……大丈夫なのかな」
 とはいえ、新人でありながら先ほどの理不尽な犬の真似をさせられずに済んでいるのだ。遼が優遇されているというかか、客人として扱われているのは間違いないらしい。
「おう、客人!」
「に、西野遼です」
「お前の名前なんて知るか! お前は今日は寮の掃除をしろ。一日で終わらせろ! 掃除用具はロッカーに入ってる!」
「え、あ、はい……」
 さっそく肉体労働に回されるのかと思っていた遼は戸惑いながらも頷いた。遼は百合根に持たされたビニールの手袋や雑巾の意味はこれだったのかと理解する。
 まずは長いこと干されていないせんべい布団のシーツを剥がし、布団は椅子を外に出して、そこに乗せる形で天日干しにする。物干しざおだけで干せる量ではなかった。ただし、椅子の数が足りないので半分も干せない。シーツは入る限り洗濯機にぶち込み、洗い終えたら即座に天日干しにした。山の天気は変わりやすいので、天気に関してはお祈りするしかない。
 それが終わったらバケツに水を汲み、雑巾がけ……雑巾はしばらく使われていないのか、くしゃくしゃのまま固まっている。素手で触りたくない……。
 埃だらけのこの寮を掃除するのはまず箒掛けをしたほうがよさそうで、箒で掃いてみたら綿埃が面白いくらいにたまっていく。それをちりとりでまとめてはゴミ箱に放り、まとめては放りを繰り返す。逐一家具をどかしたりしながら履き掃除を終える。 それが終われば次は雑巾がけだ。こんな不衛生な床に這いつくばるのは嫌なので、最初は足で雑巾を滑らせて軽く濡れぶきを行う。濡れぶきの一週目を終えたら、古い雑巾はすべて捨てて、新しい雑巾を使って今度は床に膝をついての濡れぶき。
 これで大体綺麗になる。しかし、それだけでは当然終わらない。机の上、冷蔵庫の上、棚の上、色んな所の埃を雑巾で拭っていく。そのためにごみ箱に捨てた古い雑巾をもう一度使う羽目になった。
 汚れたぞうきんを何度もバケツに浸し、いろんな場所をきれいにしていると、ここにいる人間はこんな不衛生な場所でどうして生きていけるのだろうか? と疑問が湧いてくるほどだ。
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