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第8章:部活にクレーム

20話

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 同性愛者というのは気持ち悪い……そう思う人間は父親以外にもいるだろう。だからと言って、息子がゲイだから殴る、ということを正当化したと聞かされては、さすがに人間性を疑うのが、社会人として普通の反応のようだ。
「そして、もう一つ。俺には弟がいるのですが、弟はアルカリオのグッズが好きでしてね。かわいいキャラクターに癒されると言って、カレンダーとかぬいぐるみとか、色んなグッズを揃えていました。しかし、両親は『男がこんなものを持っていたらアキラみたいにゲイになるぞ!』といって、弟が俺と同じゲイにならないように、アルカリオのグッズを全て捨てました。どうです、私の父親、素晴らしい教育方針でしょう! 皆さんは、こんな素晴らしい上司の下で働けて幸せですねぇ!」
「お前は何を言っているんだ! 恥ずかしいことを……やめろ! 今すぐやめろ!」
 父親はアキラの元へ走ろうとしたが、裕也に作業着を掴まれ押さえつけられる。このままじゃ止められないので、代わりに大声でアキラを制そうとするが、アキラは止まらない。
「その後、俺の弟は……母親の服を切り裂き、父親の酒を台無しにしたり、釣竿を折ったりなどしています。正直、褒められた行為ではありませんが、両親に自分の大切なものを理不尽に捨てられた怨みを考えれば、そういう行動に出るのも頷けます……くそ」
 嘘でも父親を素晴らしいというのは反吐が出るのだろう、つい本音を漏らしながらアキラは続ける。
「しかし、俺の素晴らしい両親は、弟のしつけのために、いまだに弟に大してアルカリオのグッズを捨てたことを謝っておりません! 初志貫徹で、一本筋の通った恰好いい大人ですね! 」
 家の恥を晒しながら苦痛を思い出すのは精神的に辛い。アキラはこみ上げる怒りや悲しみ、そして恥ずかしさに悔しさがごっちゃになり、涙目になりながら続ける。
「そして、アルカリオのグッズを好きなことと、ゲイになることがどんな関係があるというんだ? という質問に対しても、『自分で考えろ!』『そんなこともわからない子供に教える必要もない!』と、子供の自主性を重んじる、親の鑑です! 俺の父親を褒めてください!」
 事務所で大声で騒ぎ立てるアキラの行為は、本来ならば業務に支障が出るためつまみ出すべき行動だ。だが、あまりに衝撃的な父親、太助の行動の暴露に、ある者は太助を軽蔑し、ある者は太助から昔受けた理不尽な説教を思い出し憤慨する。特に怒っていたのは、父親の部下と思わしき20代の男性社員だ。胸についているネームタグの名前は萩野(はぎの)というらしい。
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