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第7章:男になりたい?
18話
しおりを挟む「なんで! なんで! 私たちが頑張っているのに! お前らは全然働かないんだよ! おかしいだろ! おかしいだろ! 私は何度も嫌だって言ってるのに、何度もおしりを触って、風呂だって覗きやがって! 減るもんじゃないだろだって!? ストレスが増えるんだよこっちは!」
竹棒に括り付けられ、自転車のチェーンで作られた鞭は、皮膚に当たると同時にその重量とスピードで肉を引き裂き、血管を叩き潰す。当たった部位は一撃で血に染まる。衝撃が内臓は骨まで届くことはないものの、即座にシャツを赤く染めている。
「綾乃……やめなさい……」
あまりの剣幕にキッチンから動くことも出来ず、震える声で母は言う。
「止めない……ここでやめたら、私は一生奴隷になる……徹底的に、二度と逆らう気が起きないように……ここで終わらせるんだ!」
だが、常識の範囲で考えている母親では、常識を捨てた綾乃を止めることは出来なかった。子供のころから抑圧され、女だというだけで損な役回りを強いられて、今では弟からも馬鹿にされる日々。さらに、祖父からは汚い欲望のはけ口にされ、いつ直接的に体を弄ばれるかもわからない毎日に怯えている。抱え込んだストレスを吐き出せるこの千載一遇のチャンスは、もう二度とやってくる保証はない。今、この瞬間にケリをつけなければ、言った通りのことになる。今日が最初で最後なのだ。
鞭を振るうのは大した運動ではないが、その運動量に見合わないほど心臓が脈打っている。今にも倒れそうな顔を無理やり動かしながら綾乃は、体を丸くして怯えている祖父の体を蹴倒して、未だに目の痛みに呻いている父親のほうへと向かう。父親も、尻を触ろうとする祖父を止めることもしないどころか、今でも実の娘に急に抱き着いて来たり、胸まで揉んで来ようとする。綾乃にとっては同罪、どころかそれ以上の存在だ。今では弟も真似をしている。
特に弟は怖かった。思春期の男の性欲は非常に怖い。レイプ被害は知り合いや家族が一番多いと聞く、だから危ない。弟も今のうちに叩きなおさないと。
咳とくしゃみがいまだに止まらない父親だが、足音をずんずん立てながら迫ってくる綾乃の気配は感じたらしい。
「やめ……ゲフッ、ゴホッ、クシュン……悪かった……」
「今更白々しいんだよ! 悪かったと思っているなら、あんなことするわけないだろ!」
チェーンの鞭を振り下ろす。そうしてまた悲鳴が上がる。
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