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第6章:自分のために
8話:これから
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翌日、明日香の家にお参りに来た裕也が昨日の出来事を話す。商店街に落書きをしていた男を捕まえたという話をされ、明日香は驚いた顔をしていた。
「え、商店街で落書きしていた犯人を捕まえたって? マジで?」
「あぁ……いつものように、この神社にお参りしたり、せめて祈りを捧げるように頼んできたぞ。商店街の店長さんたちには足が悪そうな人たちもいてさぁ、大変そうだけれど、ちゃんとお参り来てくれるかな……」
「やるじゃない! 落書きの件に関しては沢山の人が困っていたし、沢山お祈りが届きそうね。きちんとタケミカヅチへの感謝や信仰心が集まってくれるといいんだけれど……」
『それに関しては心配ないわ。裕也君のおかげでお祈りはしてもらえているみたいだし。遠隔でも、お祈りしていただければ信仰心は届くのよ』
古々は昨日の出来事を振り返りながら続ける。
「そうなんだ。ねぇ古々、裕也君はどういう風に戦ってたの?」
『そりゃもう、格好良かったのよ。スプレーで抵抗しようとした男に自転車ぶん投げて、腰を抜かした相手を自転車ごと踏みつけて仕留めちゃってさ。向かうところ敵なしって感じ? 私がサポートすることも出来たんだけれど、何もする必要はなかったわ。力があるっていいわね。流石の明日香も自転車を投げるのは難しいでしょ?』
「確かに、持ち上げるくらいは出来ても、投げるのは難しそうだなぁ。真正面から武器を持った相手にサポート無し、流石ね」
「まぁ、相手は特に体を鍛えている感じでもなかったからな……スプレーで目潰ししようと考えてたみたいだけれど、普段暴力に慣れていない人間なんてどうにでもなるよ。
しっかし、頭の悪いやつもいるもんだな。汚したシャッターの洗浄代とか、数十万かかるって話でさ。そういうお金の苦労とか、何も考えずに悪戯して……これから報いを受けると思うと……自業自得とはいえ、同情しちゃうね」
「確かに、可哀そうよね」
呆れ交じりに明日香は言う。
「弁償するために何年も贅沢できないと思うと、たしかに可哀そうだな」
「違うよ、人に迷惑をかけるような趣味でしか楽しみがないってことが可愛そうってこと。好きなことをすると人に恨まれるだなんて、生きるのも地獄ね。趣味が自分のためになるようならいいんだけれどね、勉強が趣味とか、筋トレが趣味とか」
と、明日香は言う。なるほどその視点はなかったと裕也も頷いた。
「確かにそうかも。俺の趣味が人に迷惑をかけない趣味でよかったぜ……」
言いながら、裕也の脳裏には百合根が思い浮かぶ。あいつが虐めに首を突っ込むのは果たして趣味なのか、金なのか、それとも正義感なのか。
「そいつも、画用紙やキャンバスに絵を描いていればウケたかもしれないのにな」
今は百合根のことを考えても仕方がない、と裕也は思考を振り払うようにしていった。
「え、商店街で落書きしていた犯人を捕まえたって? マジで?」
「あぁ……いつものように、この神社にお参りしたり、せめて祈りを捧げるように頼んできたぞ。商店街の店長さんたちには足が悪そうな人たちもいてさぁ、大変そうだけれど、ちゃんとお参り来てくれるかな……」
「やるじゃない! 落書きの件に関しては沢山の人が困っていたし、沢山お祈りが届きそうね。きちんとタケミカヅチへの感謝や信仰心が集まってくれるといいんだけれど……」
『それに関しては心配ないわ。裕也君のおかげでお祈りはしてもらえているみたいだし。遠隔でも、お祈りしていただければ信仰心は届くのよ』
古々は昨日の出来事を振り返りながら続ける。
「そうなんだ。ねぇ古々、裕也君はどういう風に戦ってたの?」
『そりゃもう、格好良かったのよ。スプレーで抵抗しようとした男に自転車ぶん投げて、腰を抜かした相手を自転車ごと踏みつけて仕留めちゃってさ。向かうところ敵なしって感じ? 私がサポートすることも出来たんだけれど、何もする必要はなかったわ。力があるっていいわね。流石の明日香も自転車を投げるのは難しいでしょ?』
「確かに、持ち上げるくらいは出来ても、投げるのは難しそうだなぁ。真正面から武器を持った相手にサポート無し、流石ね」
「まぁ、相手は特に体を鍛えている感じでもなかったからな……スプレーで目潰ししようと考えてたみたいだけれど、普段暴力に慣れていない人間なんてどうにでもなるよ。
しっかし、頭の悪いやつもいるもんだな。汚したシャッターの洗浄代とか、数十万かかるって話でさ。そういうお金の苦労とか、何も考えずに悪戯して……これから報いを受けると思うと……自業自得とはいえ、同情しちゃうね」
「確かに、可哀そうよね」
呆れ交じりに明日香は言う。
「弁償するために何年も贅沢できないと思うと、たしかに可哀そうだな」
「違うよ、人に迷惑をかけるような趣味でしか楽しみがないってことが可愛そうってこと。好きなことをすると人に恨まれるだなんて、生きるのも地獄ね。趣味が自分のためになるようならいいんだけれどね、勉強が趣味とか、筋トレが趣味とか」
と、明日香は言う。なるほどその視点はなかったと裕也も頷いた。
「確かにそうかも。俺の趣味が人に迷惑をかけない趣味でよかったぜ……」
言いながら、裕也の脳裏には百合根が思い浮かぶ。あいつが虐めに首を突っ込むのは果たして趣味なのか、金なのか、それとも正義感なのか。
「そいつも、画用紙やキャンバスに絵を描いていればウケたかもしれないのにな」
今は百合根のことを考えても仕方がない、と裕也は思考を振り払うようにしていった。
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