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第5章:相撲部、復活

14話

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「それは、親がヤクザなもので……でも、内緒よ? 今は暴対法が厳しいから、ヤクザだとか組の名前を出すだけでも処罰の対象だから」
 そう言って百合根はイタズラっぽく笑う。素華はすでに知っていたが、真由美は初耳のためドン引きだ。
「ま、でも誰かに襲われるなんてことはきちんと防犯に気を付けて、夜遅くには出歩かないようにすればそうそう起こることじゃないから、武術を用いるのは最終手段よ。一番の護身術は、君子危うきに近寄らず。どうしてもという時は防犯ベルを鳴らして全力で逃げる。三十六計逃げるにしかずっていうしね。それでも行き止まりでどうにもならない時に、武術の出番よ。まずは武術は使わないで済む方法を考えなさい」
「そ、そうかも、ですね」
 いきなりナイフを突きつけられるような治安の悪い場所をうろつくことはしないように生きよう、と真由美は心の中で誓いながら頷いた。
「さて、私は相撲部に入部するわけだけれど……実は文芸部の活動もあるし、剣術もしなきゃならないし? 顔出せる日は少ないから、そこんとこよろしくねー。今日も文芸部に顔出すわ」
「え、行っちゃうんですか?」
 真由美が問うと、百合根はうんと答えて神社を後にする。
「相撲部に入っておきながら相撲をしないとか、一体何を考えているんだあいつ……」
 入部を決めておきながら、何も活動せずに帰ってしまった百合根を見て、裕也は呆れてしまった。
「私達、結構人助けしているからね、何か私達から金の匂いでも見いだしているんじゃないかな……?」
 困っている人を古々達が見つけると、明日香と裕也は部活を中断したりしながら人助けに向かうこともある。その不審な行動に噂も立っていたのだろう、百合根ならばその噂を聞き逃すはずもない。
「厄介事持ち込まれないといいけれどな……むしろ俺達が厄介ごとを求めているきらいもあるんだけれどさ」
 百合根は悪いやつではないのだが、問題に首を突っ込む目的が明日香や裕也たちとは違う。百合根は明日香と裕也が色んな問題に首を突っ込んでいることを知っているのは間違いないだろうが、それに便乗したり、もしくは自分が持ってきた問題を自分たちに手伝わせようとするつもりなのかもしれない。
『ねぇ、それならあれよ。もう百合根ちゃんに私たちのことを言っちゃったらどうかしら?』
『私もそれには賛成だ。あの子は普通じゃないだけに、荒事にも対応できるだろう』
 百合根のせいで厄介ごとが増えるのではないかと思ったその一方で、古々と振々は逆に百合根が来るのは都合がいいと考えているようで、裕也の思惑をよそに不穏な会話をしている。
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