84 / 423
第5章:相撲部、復活
6話:一晩明けて
しおりを挟む
翌日、学校には真由美は来ず明日香や素華だけが来ていた。
「おはよう、明日香。真田さんはどうしてる?」
「妹と一緒に居る。他人の家で一人きりになるって、絶対に不安だろうから、今日はずっと一緒に居てあげるんだってさ。自分の家じゃないから不安そうだけれど、私の両親はどっちも優しいから問題ない……とは、言えないかな。
真由美さんはもちろん、その妹さんも、大人は暴力を振るうものだと思っているから、慣れるまではどんなに聖人でも信用しないだろうね」
「そっか……でも、明日香や俺のことは信じてくれるだろうか……? 男はだめかなぁ? 父親のせいで男への信用度とか、ゼロだろうし」
「貴方のことは嫌っていない様子だったわ。でも、頭ではわかっていても、心の中では男が怖い可能性はあるから、話しかけるなら慎重にね」
「オーケー、注意するよ」
そうして、真由美のことを聞き終えた裕也はその日の授業に臨み、放課後は様子見を兼ねて神社へと訪れた。いつもはすぐに部活に取り掛かるところだが、明日香の父方の祖父である義雄(よしお)にお伺いを立ててから家に入り、真由美達の様子を見に、かつて明日香の祖母が使っていた部屋へと赴いた。
コンコンとノックして、中にいるだろう二人にお伺いを立てる。
「はい」
真由美の声が聞こえた。
「こんにちは、真田さん。一晩経って少しは落ち着いたかい?」
ドア越しに話しかけると、彼女は少しためらいながら、『はい』という声を出す。引き戸を開けると、彼女は妹に勉強を教えているようであった。
「この家の人達、優しい人たちだろ? 俺も、相撲部の練習に付き合ってもらっているときはものすごいボコボコにされるけれど、普段は絶対に暴力とか振るわない人だから……安心して大丈夫だからな。ほら、俺もなんかこう、家族みたいに自由に入れるくらいにオープンな家だし? 昔は、毎日飯をごちそうになってたんだよ、俺。この家、客人にはとことん優しい家だから、ゆっくりしてて大丈夫だからな」
「はい、本当にありがたい限りです。皆さん、気を使ってくれて……昨日は緊張して全然眠れなかったんですが、でも今日はぐっすり昼寝してしまいました。病院に行かされて診断書も取ってきたんですが、その病院代も払ってもらって……」
「本宮さん達、サービスいいな……それで、その後……親たちの動向は分かった?」
「朝に、母親と電話しました。ちゃんと離婚の方向で話が進んでいるみたいです。でも、自分のスマートフォン以外の電話からかけるの久しぶりで、まだスマートフォン持っていない妹に何度か電話番号確認しちゃいましたよ。いつの間にか私、母親の電話番号忘れてて」
「ははは……そういう時のためにちゃんと覚えておけよ」
「肝に銘じます」
声に覇気はなかったが、とりあえず彼女の精神状態は落ち着いているようで、裕也は安心する。
「おはよう、明日香。真田さんはどうしてる?」
「妹と一緒に居る。他人の家で一人きりになるって、絶対に不安だろうから、今日はずっと一緒に居てあげるんだってさ。自分の家じゃないから不安そうだけれど、私の両親はどっちも優しいから問題ない……とは、言えないかな。
真由美さんはもちろん、その妹さんも、大人は暴力を振るうものだと思っているから、慣れるまではどんなに聖人でも信用しないだろうね」
「そっか……でも、明日香や俺のことは信じてくれるだろうか……? 男はだめかなぁ? 父親のせいで男への信用度とか、ゼロだろうし」
「貴方のことは嫌っていない様子だったわ。でも、頭ではわかっていても、心の中では男が怖い可能性はあるから、話しかけるなら慎重にね」
「オーケー、注意するよ」
そうして、真由美のことを聞き終えた裕也はその日の授業に臨み、放課後は様子見を兼ねて神社へと訪れた。いつもはすぐに部活に取り掛かるところだが、明日香の父方の祖父である義雄(よしお)にお伺いを立ててから家に入り、真由美達の様子を見に、かつて明日香の祖母が使っていた部屋へと赴いた。
コンコンとノックして、中にいるだろう二人にお伺いを立てる。
「はい」
真由美の声が聞こえた。
「こんにちは、真田さん。一晩経って少しは落ち着いたかい?」
ドア越しに話しかけると、彼女は少しためらいながら、『はい』という声を出す。引き戸を開けると、彼女は妹に勉強を教えているようであった。
「この家の人達、優しい人たちだろ? 俺も、相撲部の練習に付き合ってもらっているときはものすごいボコボコにされるけれど、普段は絶対に暴力とか振るわない人だから……安心して大丈夫だからな。ほら、俺もなんかこう、家族みたいに自由に入れるくらいにオープンな家だし? 昔は、毎日飯をごちそうになってたんだよ、俺。この家、客人にはとことん優しい家だから、ゆっくりしてて大丈夫だからな」
「はい、本当にありがたい限りです。皆さん、気を使ってくれて……昨日は緊張して全然眠れなかったんですが、でも今日はぐっすり昼寝してしまいました。病院に行かされて診断書も取ってきたんですが、その病院代も払ってもらって……」
「本宮さん達、サービスいいな……それで、その後……親たちの動向は分かった?」
「朝に、母親と電話しました。ちゃんと離婚の方向で話が進んでいるみたいです。でも、自分のスマートフォン以外の電話からかけるの久しぶりで、まだスマートフォン持っていない妹に何度か電話番号確認しちゃいましたよ。いつの間にか私、母親の電話番号忘れてて」
「ははは……そういう時のためにちゃんと覚えておけよ」
「肝に銘じます」
声に覇気はなかったが、とりあえず彼女の精神状態は落ち着いているようで、裕也は安心する。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!
いーじーしっくす
青春
赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。
しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。
その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。
証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。
そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。
深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。
拓真の想いは届くのか? それとも……。
「ねぇ、拓真。好きって言って?」
「嫌だよ」
「お墓っていくらかしら?」
「なんで!?」
純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件
木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか?
■場所 関西のとある地方都市
■登場人物
●御堂雅樹
本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。
●御堂樹里
本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。
●田中真理
雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる